◆第二十九条 ページ29
「やめろって言ってんだろーがァァァァァ!!」
「ブベラァ!?」
「ナ……ナイススイング」
神楽ちゃんの渾身の一撃によって遠くの方まで飛んでいってしまった浪士は、暗闇の中に姿を消した。
あまりに見事なスイングに私は声を出さずにはいられなかった。
こんな小柄な女の子なのに、一体どこから今みたいな力が湧いてくるの……?
「あっ、ちょ、ちょっと暴れ……あっ!」
「ワンワン!」
新八さんの腕に抱かれていたルマちゃんが勢いよく飛び出ると、また何処かへと走り出してしまった。
「……追いかけなくちゃ!」
「あっ、ちょっと待つネ!」
痛い。
先ほど男にきつく掴まれたせいで、癒えていない傷口がじんじんと痛み始めた。
林の中へひたすらかけていくルマちゃんを見失わぬよう、目を離さず必死に追いかけた。
だからだろうか。
ルマちゃんしか見ていなかった私は、いつの間にか自分の近くに浪士がいたことなんて分からなくて、その存在に気づいた時には遅かった。
「おっと、何処に行くのかな〜お嬢さん」
「…………!」
早く追いかけないと、せっかく万事屋さんが必死に探して見つけ出したルマちゃんをまた逃すことに……!
じわじわと熱くなっていく傷口を手でおさえながら、必死に声を出した。
「そこ……ください」
「あ?」
「……そこを退いてください!」
「…………」
私の言葉など全く響かなかったのか、男は顔色一つ変えずに刀を振り上げる。
「退けって言ってんのが聞こえねーのか」
覚悟を決め、かたく閉じていた目を開けると、私に刀を向けていた男は血を流し倒れていた。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時