◆第三条 ページ3
5日前に何があったっけ……。
そもそも、今日は何日で私はなんで……。
考えれば考える程、頭の中がこんがらがっていく。
「その様子だと覚えてないみたいだな」
「…………はい」
慌てふためいている姿を見て察してくれたのか、一から順に物事を追って話す彼は、その風貌とは裏腹に、とても優しそうな人だった。
「……助けてくださり、ありがとうございました」
忍び姿の男に襲われ倒れていた場所が、この屯所と呼ばれる近くで、私を見かけた勲さんが助けてくれたこと。まるまる5日間眠っていたこと。
懇切丁寧な説明のおかげで、欠如していた記憶のピースが徐々に埋まっていく。
「それにしても、君みたいな普通の女の子を死に追いやるとは……一体どんな連中だ」
先程までの優しい表情は一瞬にして消え、男らしい真剣な顔つきになったのが分かった。
「近藤さん。入るぜ」
勲さんの背後にある襖から、低めの男性の声が聞こえた。
「おう、入れ」
襖を開けた男性は、白い肌に合う黒髪で、人を射抜くような切れ長の目をしているのが特徴的だった。
その横にいる甘栗色の髪をした男性は、前者とはまるでタイプの違う、爽やかな甘いマスクの持ち主。
どちらも、顔の整った美形。
「あっ、目が覚めたみたい………で……」
「そうみてぇだな……オイ、お前。大丈夫だっ………!?」
私の顔を見るなり目を大きく広げ、驚く2人。
一度、畳の上に膝をつくと、顔を覗き込む形で更に距離を縮めてきた。
こんなにも美形の男性に顔をまじまじと見られるのは初めての事で、私の顔がどんどん熱くなっていく。
2人と目を合わせるのが恥ずかしくなった私は、視線をずらし、勲さんを見た。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時