◇第十六条 ページ16
歌舞伎町に着いてから、着物店をいくつか見つけた私は、一通り眺めてから買う店を決めた。
お店に並べられたいくつもの色鮮やかな着物に、胸が高鳴る。
悩みに悩んだ末に選んだのは、水色と桃色の安い着物。
これは勲さんのお金で買うもの。贅沢は出来ない。
……買えるだけでも、ありがたいことだもんね。
お会計を済ませ、自動ドアで外に出ると沖田さんが私を見つめていた。
「ずいぶんと早かったですね。もういいんですかィ?」
「はい、十分です。わざわざ付き合っていただき、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げてお礼を言い、沖田さんに近づくと、着物の入っている袋を何も言わずに持ってくれた。
それから2人で歌舞伎町を歩いていると、前方から銀髪の男性を中心に歩く、3人の男女が近づいてきた。
「あれれ〜。沖田くんじゃない。どうしたのかな〜こんなところで」
私たちの正面に立ち止まると、銀髪の男性がニヤニヤとした表情で沖田さんに話かけてくる。
「あれれ〜、どうしたのかな〜。珍しく女の人連れて歩いてるけど、どうしたのかな〜」
銀髪の男性に続き、赤色のチャイナ服を着ている少女もニヤニヤとした笑みで絡んできた。
「もう。そんな態度じゃ、沖田さんとその彼女さんに迷惑ですよ?」
2人に話かける眼鏡の青年は、見た目通り真面目そうだが、それと同じくらい
……地味。
「あの………すいません。心の声漏れてますけど」
「……っ!すみません!」
眼鏡の青年に言われ、必死に自分の口を塞ぐ。 思ったことがそのまま口に出てしまったようだ。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時