◇第十二条 ページ12
「ごちそうさまでした」
勲さんの隣に座っている私は、手を合わせて食べ終わった食器に向けて言った。
「おっ、ここ最近は食欲も出てきたみたいで、良い傾向にあるな」
「はい。作ってくれるおばさん達のご飯が美味しくて……つい」
自分で言っておきながら、食欲旺盛の女だと思われたらと思うと、少しだけ恥ずかしくなった。
「なに、照れる事はないぞ。たくさん食べる事は良いことだ。傷の回復にも効くだろう」
勲さんは笑顔で私にそう言うと、頭を優しく撫でてくれる。
食べ終わった食器を返却口に持っていこうと席から立った時に、彼に呼び止められた。
「そういえばAは……ここに着てからずっとその着物だよな？」
「そう、ですね」
男たちに襲われた夜。
もちろん手ぶらで、着替えなど持っているわけもなく。
さすがに血だらけの着物を着るわけにはいかないので、食堂のおばさんに無理を言って、彼女の持っている着物を一枚だけ借りている状態。
「総悟。確かお前、明日は非番だったよな？」
私の正面で土方さんにちょっかいをかけている沖田さんが、動きを止めて勲さんを見る。
「はい。何か頼み事ですかィ？」
「おう。おまえ明日、彼女に一日付き合ってやってくれ」
「…………」
「………勲さん？」
沖田さんが勲さんの顔を見た後、私の顔を見る。その顔はいつもと変わらない無表情で、何を思っているか分からない。
「いや〜なんせ年頃の女性がこんなむさ苦しい男所帯の中じゃ息が詰まるだろうと思ってな。リフレッシュだ、リフレッシュ！」
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作者名：みさ | 作成日時：2016年7月16日 21時
