◆第十一条 ページ11
「皆さんによくして頂いてるおかげで、一人で動けるまでに回復しました」
胸と背中に出来た傷はまだ少し痛むけど、歩くまでには良くなった。
「いやいや!俺たちは特になにも……」
指で頬を触る山崎さんは、どこか照れているみたいだった。
「今日は非番なんですか?」
山崎さんの手に握られているラケットを見ながら、私は質問をする。
「いえ。今日はいつもと違って、夕方から仕事なんです……とはいっても、俺ひとりだけですけどね」
ははっと笑いながら、彼は空を見つめた。
前に勲さんから聞いた話によると、山崎さんは他の隊とは違う「監察方」という、少し特殊な役職で働いていると聞いた。
単独で任務を行うことが多いらしいので、もしかしたらそのこと……?
「そうなんですか……。一人だと心細くなったりなどはしないんですか?」
「俺は一人でする事が多いからね。あんまり思った事はないかなー」
夜の江戸の町を一人で仕事だなんて……。
山崎さんは大人だなぁとしみじみ感じながら、私も同じように空を見上げた。
「……よし!休憩終わり!」
凛とした声でそう言うと、彼は再びラケットの素振りを始める。
する事も特にない私は一人静かに山崎さんの素振りを見ようとしたが、
突然、
「コルァァァァァァァ山崎ィィ!お前また意味もねー素振りしてんのかァァ!!」
「うわっ副長!」
突如現われた土方さんの怒鳴り声によって、和やかな空気は一変し、山崎さんは土方さんに追われどこかへ逃げてしまった。
___土方さんは泣く子も黙る鬼の副長だから。まぁ、怒らせないように気ぃつけな。
沖田さんがよく言ってる言葉を、少しだけ理解出来た気がした。
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作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時