短編 ページ32
side木林
雨「これ、持ってて。」
彼女の家のソファでゆっくりしていたら、突然カードを渡された。
木「何？これ。」
雨「臓器移植の意思表示カード。」
何の前触れもなく渡されたそれは、遺志というか、遺書のようで、とてもいい気分とは言い難い。それを察したのか、少しだけ慌てた口ぶりで彼女が続ける。
雨「この前、テレビでやってて、貰ったまま書いてなかったのを思い出したの。別にすぐ死ぬわけじゃないよ。」
笑いながらそういう彼女に、頭をもたげていた不安は打ち消された。
渡されたカードの裏を見る。そこには『1.私は、脳死後及び心臓が停止がした死後のいずれでも、移植の為に臓器を提供します。』の欄に手書きで綺麗な丸がついている。彼女らしい選択だと思う。
目を引くのはその下の欄。
“提供したくない臓器があれば、×をつけてください。”
の欄に、眼球に×がついている。
その下の特記欄には“心臓弁、血管”という彼女の字。
木「心臓弁、血管って？」
キッチンで料理を始めた彼女に聴こえるように、先程より少し大きい声で話しかけた。
雨「臓器以外にも、心臓弁や血管も移植対象で、特記欄に書いておけば持っていってくれるらしいよ。心筋梗塞とかで心臓自体は使えなくても、中の弁が綺麗であれば、弁膜症とかで心臓弁の移植を待ってる人に使ってもらえるんだって。」
木「へぇ、それは知らなかったな。」
雨「私もテレビ観るまでは知らなかったけどね。」
木「心臓弁や血管は提供しても、眼球は提供したくないの？」
雨「ん〜。こんなこと言ったら笑われるだろうけど、眼球がなくなったら南雲を探せない。」
木「………。」
彼女の視線は食材に向いたままだ。
雨「あ、それとそのカード、1枚は自分で、もう1枚は大切な人に渡しておくんだって。だから南雲が持っててね。」
何でもないように彼女は言うけど、まるでプロポーズされながら婚約指輪を渡された気分だった。
抑えようと思っても、表情に出てしまう。しばらく顔の熱を感じていた。口角も自然に上がってしまう。
キッチンで料理を続ける彼女を横目で見ながら、臓器提供の意思表示カードを見る。
もう少し、幸せを噛みしめていよう。
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まみ(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます！アンナチュラル関連を読んでいる内に、素敵な中堂さんがたくさんいて、私の妄想も膨らみました(笑)妄想の整理のための更新なので、こうしてコメントをいただけるのは、とても嬉しいです！今後ともよろしくお願いしますm(._.)m (2018年4月8日 14時) (
レス) id: f6d9d3c3d2 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 初めまして！毎回更新楽しみに読ませていただいています！中堂さんとの距離も近くなり、今後の展開がますます気になります(^^)無理せず更新続けていただけたら嬉しいです！楽しみにしています♪ (2018年4月7日 0時) (レス) id: c9110d85db (このIDを非表示/違反報告)
まみ(プロフ) - 沢崎さん» 坂本さんの評価、ありがとうございます(笑)やっぱり飯尾さんの素な感じがしますよね( *´艸｀) (2018年3月31日 16時) (レス) id: f6d9d3c3d2 (このIDを非表示/違反報告)
沢崎(プロフ) - まみさん» さ、坂本さん視点がある…！ｗ私の中でも坂本さんは結構飯尾さん()なので、しっくり来ていますよ。お話の展開もほのかに波乱含みでそわそわします。 (2018年3月31日 3時) (レス) id: a5bf5d2b75 (このIDを非表示/違反報告)
まみ(プロフ) - 沢崎さん» ヒロインの成長にも着目していただいて嬉しいです！坂本さん、今後も出てきますが、どうしても坂本さんというより、ずんの飯尾さん（演じてる人）になってしまう…！お笑い好きが仇になってます(^-^; (2018年3月30日 14時) (レス) id: f6d9d3c3d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まみ | 作成日時：2018年3月25日 14時
