十一話 ページ12
「…キス!?」
目の前の神楽ちゃんは焦っている私とは対照的に落ち着いた表情で頷いた。…キスって、私と沖田くんが?
その二つの単語で思い出すのは昨日の出来事。…でもあんなのは、キスなんかじゃないもん。キスは好きな人とするものだし…!
「キスのフリでもいいヨ!やっぱりそういう演出がないとつまんないアル」
「そ、そんなこと言われたって…土方くんん…」
「…んな顔で見られてもよ…」
隣にいる土方くんを見上げると困ったような複雑な表情をしていた。こうやってついつい困ったときは土方くんに頼ってしまう。…うう、ごめんね土方くん。
「…俺とじゃ、駄目か?」
「っひ、え?」
まさかそんな提案をしてくるとは思わなくて間抜けな声が出た。…土方くんと、キス。あり得ないシチュエーションに首を捻る。まだ沖田くんとの方が想像出来るかもしれない。…無理矢理されたし。うんん、と唸っていると神楽ちゃんがどっちでもいいアルと答えた。
「…藍澤はどっちとキス出来る」
「…え、と。きゃ、土方くん…?そんなの、わかんない…」
「…じゃあ試してみるか?今」
顔を近づけてくる土方くんの口を思わず両手で塞いだ。掌に感じる熱に顔が赤くなってくる。…絶対土方くんとキスなんて無理だよ、もうこんなに恥ずかしいのに。
「…冗談だ」
「…っ、沖田くん!」
思わずそう言ってしまった。だって、だって。土方くんのばか。こんなの、ひどい。私がそういうと神楽ちゃんは了解アル、と言って台本に何やら書き込み始めた。
「…悪かった、藍澤」
「…」
「…早く答えねえお前に少しムッとしたっつーか…ガキみてえなことしてごめん」
「…土方くんのばか」
「…悪い」
「…もう、いいよ、私もごめんね、土方くん」
安心したみたいな土方くんの顔を見て思わず笑ってしまった。ジッと見つめてくる土方くんに首を傾げると土方くんが溜息を吐いた。
「…フリ、だからな」
「…うん?本当にキスはしないよ」
「…やっぱ俺もキスしていいか?」
「…!?!?」
勿論アル!その方が面白いネ!と叫ぶ神楽ちゃんの声が聞こえて私は椅子から落ちそうになった。
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光華(プロフ) - お疲れごはん、リアルタイムで楽しく読ませていただいてます!こちらも面白いです!私は完全に土方さん推しなので、土方さんに落ちないかな((殴 どちらも更新楽しみにしてます! (2020年6月6日 22時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マピト | 作成日時:2019年12月6日 22時