陽春２ ページ21
「あ」
「えっ」
マイコと私の声が重なる。
運転席から降りてきたのは、北山さんだった。
見間違い？
勘違いかな。
3度見したけど、間違いない。
双子とか激似の兄弟とか
まだ疑ってるけど。
「おはようございます。今日の送迎と農園の案内を担当する北山です」
あっさり本人だとわかってしまった。
何で北山さんがここに？
お店は…まさか農家に就職とか、はないか。
ホントに本物？
北山さんが自分で名乗ってるのにまだ信じられない私を他所に
「木須です。北山さん、今日はよろしくお願いします」
マイコはさっさと北山さんに挨拶する。
いや、もうちょっと驚こうよ。ココ。
「こっちはAです。ほらA、挨拶」
マイコが母みたいになってる。
うそ、むしろマイコっていつも子どもじゃん。
「あ、あの、Aです。今日はお世話になります」
ちょっとキョドって挨拶をすると北山さんは柔らかく笑って
「何度かお店に来てくれてますよね。いつもありがとうございます」
って言ってくれた。
覚えててもらったことに感動しすぎて、もう泣きそうだ。
そして、北山さんのその笑顔も眩しすぎです。
「あ、ありがとうございます…」
促されてワゴン車に乗る。
「途中、揺れるところがありますので、ベルトをしっかり絞めておいてください」
「はーい」
「はーい」
ミラー越しの指示に私達の返事がハモる。
ミラーに映る北山さん、カッコいい……
運転してるの初めて見たけどこんなにカッコいいんだ。
やば…
そんなことを思ってたら、
「ねえ、北山さんもいいよね」
って。
も、て何よ。
「太輔さんから乗り換えたくなっちゃうんじゃない」
なんて小声で笑う。
「ちょっと、こんなとこでそういうこと言わない」
慌ててマイコを嗜める。
「なんか、夢小説みたいで面白くなってきたわ」
はい？
マイコさん、それちょっと意味わかんない。
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作者名：lettuce | 作成日時：2023年1月28日 0時
