霙3 ページ16
.
「このビーフシチュー、ホント美味しいよね!」
「うん、鍋ごとテイクアウトしたい」
このやりとり、今日何度目だろ。
豆もきのこも関係なく美味しそうだから
私も同じビーフシチューのランチにしたんだけど、
これは絶対当たりだ。
「マイコ、さっきの話の続きなんだけど」
「あー、そうね」
さっきは話し始めたところでサラダが来て
彩りの良さに話が逸れて、本題に入らなかった。
「芸人さんの熱愛報道のとこまで聞いたけど、それだけじゃ全然わかんないからね?」
「あはは、そうだよね」
マイコはビーフシチューの最後の一口を飲み込んで話し始める。
「芸人さんの熱愛報道見てたら、私の推しの熱愛とかわかったらヤだなぁって」
さらっと言うけど、引っかかる単語。
「推し?」
マイコとは会わなくても毎日LINEか電話で連絡取ってるけど、推しなんて初耳だ。
「推しなんかいたんだ」
「あ……うん」
マイコの目が泳いでる。
「彼氏、ではなく?」
「彼氏だったらいいんだけどねー」
アイスティーに刺したストローをクルクル回す。
「初耳なんだけど。マイコの推し」
「うん、最近かな。推しになったの」
「そうなんだ」
で、誰なのよ?
「誰か言わなきゃだよね?」
昨晩のカオスなLINEが納得できるなら別にいいんだけどね。
聞かなきゃわかんなくない?
「まさか…ここに来た理由って」
ピンと来たことはすぐにマイコに否定される。
「違う違う。北山さんでも太輔さんでもないよ」
さすがに声が小さくなる。
「違うんだ。もう、出し惜しみしてないで教えてよ」
「そう、だよね。実は……」
マイコは体を乗り出すと、内緒話をするように口元に手を当てた。
57人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:lettuce | 作成日時:2023年1月28日 0時