天高く (ページ11)

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秋の空➓ ページ11

「で、お前ら何かあったの？」

　
　その一言で、思考停止したオレ。

　中居さん、何か知ってるんですか。

　何か見たとか

　何か聞いたとか

　えっ、でも…

「何もあるわけないか」

　ニヤリと笑う。

　中居さんがこの顔をする時は、何か、ある。

「店長、悪い顔してますよ」

　北山も思うところがあるらしい。

「ま、お前らに何かあってもいいけどな」

　楽しそうに出て行った中居さんを追いかけたい
衝動に駆られたが、

　墓穴を掘りそうで思いとどまった。

　
　

　あの日からしばらく用事が重なって、

　ここに来るのも北山に会うのも2週間ぶり。

　あのことは渉の他には誰にも話していない。

　

　ランチ終わりからの勤務でフロアに出た時

　北山と目が合ったはずなのに逸されて、

　動揺してしまった自分にさらに動揺して

　心に蓋をして1日を終えた。

　そして、

　今、オレは中居さんの言葉に

　また動揺している。

　あれは、事故みたいなもんだ。

　と思っていたが…

　違うんだろうか。

　止めてしまった足を再び進めると、
　ロッカールームから物音がした。

　北山が、体を丸めるようにして俯いている。

　その手が、

　オレのロッカーに当てられていて

　胸が騒いだ。

「北山？」

　

　オレの方を振り返る北山。

　その目に涙が滲んでいる。

　
「北山…」

　泣いてるの？
　

「……どうして」

　
　
　北山の頬に触れ、こぼれた涙を拭った。

　
　倒れないように支えながら体を起こして

　そのまま腕の中へ引き込んで抱き締める。

　オレが、

　泣かせたんだな…

　
「ごめん」

「藤ヶ谷…」

　掠れた声で、オレを呼ぶ。

「藤ヶ谷」

　不意にオレの腕から北山は逃れた。