天高く (ページ2)

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秋の空ページ2

「おつかれした！」

「おつかれ。明日も頼むな。」

「うす！」

　店の奥のロッカールームに入ると、オレはどさっと硬いソファに体を預けた。

「疲れたー。」

　ガシャン。
　ロッカーが乱暴に開かれる。

　今日はいつにも増して機嫌が悪そうだ。

「今日もあの子居座ってたなー。
　毎日毎日、飽きもせずによく通ってくれるよ。」

　その時間と金、分けてくれー。

　ため息混じりで言うと、藤ヶ谷がオレを睨みつけた。舌打ちが聞こえたように思うのは、たぶん気のせいではない。

　うちのカフェは、半年ほど前に店員がイケメン揃いだとかSNSで話題になった。
　オレからすると、普通じゃね？と思う面々だが、客は確実に増えているから世間ではイケメンなんだろう。おかげでリピーターも増え、今では閉店間際でもけっこう賑わっている。

　よっこいせと言わんばかりに立ち上がり、藤ヶ谷の隣のロッカーを開ける。

　同時に、藤ヶ谷は開ける時よりも派手な音を立てて扉を閉めた。身を翻して裏口から出て行く。

　おつかれ。

　藤ヶ谷の背中を見送って心の中でつぶやいた。