アスファルトに染みついた ページ9
全てを話し終えた今になって気付く。あんなに詳しく話さなくとも、もっと短く簡潔に纏められたはずなのに、随分と未練タラタラなのが露呈してしまった。
それに加えて、伊沢さんのヘアメイクを開始してから異常に時間が経過していることも問題である。外にいる河村にはさぞかし怪訝に思われているだろう。あの日の全てを話してしまったことを彼が知ったら、きっと、友達にすら戻れない。
「ごめんなさい、つい夢中になっちゃって。撮影頑張ってくださいね」
どこか一点を見つめたままの伊沢さんに声を掛け、取り繕うようにへらりと笑った。初日にこんなことを仕出かすなんてとんだ能無しヘアメイクだ。
「甲斐さんは、知ってて来てますよね」
「へ？」
「河村さんがここにいること。…違ったら申し訳ないっすけど」
もう、彼に核心を突かれたのは今日で何度目なのだろう。確かに「QuizKnock」という団体名を知った時、詳しく調べた。否、ヘアメイクを担当するのだから調べないわけがなかった。あの日以降、河村が何処で何をしているのかすら分からないままだったのに、画面の中で笑っている彼を見つけてしまったのだ。
長い時間葛藤した末、止まっていた秒針を1秒進めることにしてみるしか無かった。
「はは、困っちゃうなぁ」
「やっぱり」
本当は大いに頭を抱えて溜息をつきたかったが、そんな気持ちを抑えて苦笑する。
「元カノがヘアメイクなんて、支障きたしますよね。次から私より腕のいいヘアメイク紹介するので…」
バレてしまった以上、というよりかは、河村が私という存在に気付いたあの時から、もう元に戻るなんて無理なことは知っていた。一縷の望みに賭けたかった過去の私は風に吹かれて塵のように飛んでいく。
「何言ってんすか」
あぁ、そんな生温いことじゃ許して貰えないかな。やっぱり仕事に私情なんか持ち込むべきじゃない。
「知ってます？俺と河村さん、仕事仲間な以前に友人でもあるんですよ。やっぱり、お友達の恋路は応援してあげたいじゃないですか」
思っていた言葉とは180度違った。誇らしげに、子供みたいにそう言う彼は大きく笑っていた。なんて、お人好しな友人を彼は持ったのだろう。東京で上手くやれているか気になって仕方無かったあの頃の私の不安は、杞憂だったらしい。
「それは、つまり…」
「今後もウチの社員のヘアメイクをお願いしますってこと」
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豆大福(プロフ) - akariさん» 気付いて頂けて嬉しいです。あのお話のモチーフにさせて頂きました〜！これからも少しだけ要素は取り入れるので、引き続き読んでいただければ幸いです！ (2021年1月14日 16時) (
レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
akari(プロフ) - コメント失礼します。違ってたら申し訳ないんですけど、アラシックの方ですか？？台風ジェネレーション、いい曲ですよね。大好きなんです！！ (2021年1月11日 23時) (レス) id: dcff645a31 (このIDを非表示/違反報告)
豆大福(プロフ) - *ゆ う*さん» たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます。そう思って頂けたら良いなと思いつつ書いたので、伝わって良かったです〜！これからもどうぞお楽しみください…！ (2021年1月9日 10時) (レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
*ゆ う*(プロフ) - 最初から胸が締めつけられるいい感じの切なさで好きです。これからの二人の関係の進展も気になるところです。甘いのも良いですがちょっぴり切ない物語もいいなぁと思わせてくれる作品ですね！お気に入り登録したので更新楽しみにしています！ (2021年1月7日 20時) (レス) id: a6ab41580b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆大福 | 作成日時：2021年1月7日 19時
