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「高校の時の、何なんですか」
これだから頭の回転の早い人はとも思ったし、あの場で変に反応するべきでは無かったなとも思った。鏡越しに私を見てくる彼の視線が痛い。射抜くようで、もう何かを知っているようで。
「親しい間柄でも無いのに行き過ぎましたね、話題変えましょうか」
「…違うんです」
話したくないわけじゃない。前に進みたくないわけじゃない。けど、どうしたってもう何も出来ないことを悟りたくなかった。汚れた水をろ過したって汚れさせていたものが明確になるだけ。色を一度塗ってしまったキャンパスは真っ白には戻らない。
「河村と私、高校の時に交際してたんです」
でも、新しい色で、明日をもう一度塗り替えることはできると思うの。
*
忘れもしない、卒業式の日。お別れムードが一通り終わった日も沈んだ頃、私達は街を見下ろす高台で待ち合わせをした。お互い日中は友達と話していたから、その時に出来なかった2人だけの思い出を、大切に大切に振り返った記憶は今でも鮮明にある。
「明日の朝早く、ここを出るよ」
会話が途切れて、ただ空に浮かぶ光の屑を眺めていた時。河村が不意にそう言った。
「えー、ちょっと急だなぁ」
本当は分かっていた。彼が東京大学に合格したことが、同時に何を示していたのかなんて。
もう少し早く言ってくれれば良かったという思いと、祝福しながら見送ってあげたいという相反する気持ちを胸に抑えきれなくて、無理にはしゃいだフリして片道切符を奪い取る。
「あ、ちょっと」
「返さないもんねー」
昼間じゃなくて、夜で良かったとしみじみ思う。明るい頃であれば、潤んだ瞳なんてすぐに分かってしまっていただろうから。
「あーあ。こんなの暗闇に落としちゃいたい」
わざと、口を滑らせた。最後くらい許して欲しいと思う。きっと彼のことだから暫くここには帰ってこない。それはドライなんじゃなくて、どうすれば良いのか分からないだけなのだろうけれど。
片道切符を夜風に吹かせて、河村の方を見ると、戸惑ったようにしていた。私はそんなに悲しい顔をしているだろうか。
「私ね、ヘアメイクさんになりたいの」
「へぇ」
「もし夢が叶ったら、拓哉のヘアメイクもしてあげたいなぁ。世界一の良い男にしてあげたい」
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豆大福(プロフ) - akariさん» 気付いて頂けて嬉しいです。あのお話のモチーフにさせて頂きました〜！これからも少しだけ要素は取り入れるので、引き続き読んでいただければ幸いです！ (2021年1月14日 16時) (
レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
akari(プロフ) - コメント失礼します。違ってたら申し訳ないんですけど、アラシックの方ですか？？台風ジェネレーション、いい曲ですよね。大好きなんです！！ (2021年1月11日 23時) (レス) id: dcff645a31 (このIDを非表示/違反報告)
豆大福(プロフ) - *ゆ う*さん» たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます。そう思って頂けたら良いなと思いつつ書いたので、伝わって良かったです〜！これからもどうぞお楽しみください…！ (2021年1月9日 10時) (レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
*ゆ う*(プロフ) - 最初から胸が締めつけられるいい感じの切なさで好きです。これからの二人の関係の進展も気になるところです。甘いのも良いですがちょっぴり切ない物語もいいなぁと思わせてくれる作品ですね！お気に入り登録したので更新楽しみにしています！ (2021年1月7日 20時) (レス) id: a6ab41580b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆大福 | 作成日時：2021年1月7日 19時
