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「勉強と恋愛は比べる物じゃないよ。そりゃあね？支障が出るぐらい毎日あれこれしてたら問題だけどさ、Aと話すことが河村くんの息抜きにもなったりするんじゃないのって話」
1限目の教材を机に出しながらそういう隣の子は少し大人びて見えた。まだ中学生みたいに迷いながら、遠回りしながら1ミリずつ進んでる私とは真反対で、輝きが羨ましい。
「…そっか、ありがとうね」
「マジでもどかしすぎ！ほんと！」
ダメ出しを食らって苦笑している間に担任がドスドスと歩いてきてSHRが始まった。
今日は少し積極的になろうかな、なんて考えた一日の始まり。
*
6限目終了の合図と共に一斉に帰り支度を始める。誰よりも早くセカンドバッグに荷物を詰めて向かった先は、2つ隣の彼奴のクラスだった。
「ごめん、拓哉いる？」
「さっきどっか行ってた。チョコでしょ？河村なら今週掃除当番だから伝言あるなら伝えとくよ」
「じゃあ下駄箱で待ってるって言っといて、ありがとね」
クラスを見渡しても彼奴の姿は見当たらなくて、すぐ側の知り合いの男子に声を掛けた。どうやらもう暫く時間がかかりそうなので有難く伝言を渡し、高鳴る胸を押さえながら下駄箱へ。
肝心な時にはいつも彼奴は居なくて、いつも私が待つ羽目になっている。たまには私が待たせてみたいってのに。
「A」
外の景色を眺めながら数分待っていると、背後から聞き慣れた声。
「待たせた」
心做しか拓哉の声は上擦っていた。教室から走ってきたのか少し火照った顔も含めて、久しぶりに見る彼の表情で。
「…今日、バレンタインだから」
「マジで？ありがとう」
本当に私たちは不器用同士だなと改めて実感した。緊張して最低限のことしか話せない私と、どこまでも勘が鈍くて消極的な拓哉。
校庭での部活動の声が響き渡るこの廊下で、私たちの雰囲気だけがずっと馴染めないまま。
「拓哉」
「ん？」
「…合格したら、東京行くの？」
か細くて震えた私の声が自分の耳に入る度に自己嫌悪に陥って耐えられない。今すぐにでも逃げてしまいたくて、手汗を握り締める。
「──今日この後、久しぶりに公園行かない？高2の時よく行ってたあの公園」
もう何回目かも分からないはぐらかし。此奴は案外顔に出やすいタイプだから全部分かる。それを言葉で言ってくれる日が、もしかしたら最後の時なのかもしれない。
…心の奥底で何かを悟った、そんな高校最後のバレンタインデー。
続く
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豆大福(プロフ) - akariさん» 気付いて頂けて嬉しいです。あのお話のモチーフにさせて頂きました〜！これからも少しだけ要素は取り入れるので、引き続き読んでいただければ幸いです！ (2021年1月14日 16時) (
レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
akari(プロフ) - コメント失礼します。違ってたら申し訳ないんですけど、アラシックの方ですか？？台風ジェネレーション、いい曲ですよね。大好きなんです！！ (2021年1月11日 23時) (レス) id: dcff645a31 (このIDを非表示/違反報告)
豆大福(プロフ) - *ゆ う*さん» たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます。そう思って頂けたら良いなと思いつつ書いたので、伝わって良かったです〜！これからもどうぞお楽しみください…！ (2021年1月9日 10時) (レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
*ゆ う*(プロフ) - 最初から胸が締めつけられるいい感じの切なさで好きです。これからの二人の関係の進展も気になるところです。甘いのも良いですがちょっぴり切ない物語もいいなぁと思わせてくれる作品ですね！お気に入り登録したので更新楽しみにしています！ (2021年1月7日 20時) (レス) id: a6ab41580b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆大福 | 作成日時：2021年1月7日 19時
