とある誰かのお手伝い ページ15
多分、傍から見ればかなり思い悩んでいるように見えたのであろう。
「仮眠取ったらどうです？撮影部屋ででも」
「…僕そんなに疲れてるように見えた？」
有給休暇は瞬きをしている間に終わってしまった。そうして無駄な休日を過ごした僕はオフィスにいる。執務室でいつもと同じように仕事をしていたはずが、突然我が社のCEO直々に休むよう促されたというわけである。
「とっても」
「あぁそう。じゃあ遠慮なく」
そんな優しさを無下に出来るほど僕には余裕が無かった。体力的にも、精神的にも。故に横で笑みを浮かべた伊沢に視線を送り、有難くお言葉に甘えることにしたのだ。
「…何だよ」
執務室から撮影部屋へはそう遠くない。大企業のようにビルを丸ごと──なんていうオフィスではないので、ほんの少し歩けばそこに。僕はすぐに眠りにつけるはずだったのに、何故か後ろには依然として伊沢が着いてきていた。
「たまたまそこに用があったことを思い出して」
「撮影部屋じゃなくて僕だろうが。どうせ」
「そうとも言いますね」
面倒見が良いと言うのか、お節介と言うのか。僕が撮影部屋のドアを開けてお馴染みの赤いソファに寝転んでも尚、伊沢は性懲りも無く司会者用のイスに腰掛けた。
「甲斐さんとはどうなんです？」
前置きという物を知らないのかと思った。冗談だとしても、こいつが前置きを知らないわけが無い。動画で嫌という程ベラベラと喋るこいつに前置きという言葉はあるはずであった。
けれど伊沢から殴るように出てきたその言葉はあまりにも直球で。
「懲りないね、聞かなくたってヘアメイクの時間に甲斐から何か聞いてる癖に。何聞いたの？」
質問に対して質問で返したことは許して欲しい。答えたくはない質問なのだから。
視線なんて1ミリもくれてやらない。クリーム色の天井をただ見つめた。
「守秘義務がありますから」
「おいおい。俺の守秘義務はねぇのかよ」
随分と空っぽな言葉で返されたものだ。甲斐は僕の学生時代のあれこれを赤裸々に話したのにも関わらず、僕は甲斐の話したことを教えて貰えない。世の中の不条理にも程がある。
「まぁそこは置いといて」
「置いとけねぇ〜」
と言いつつも、こんな適当な会話にいちゃもんをつける程、僕らは初対面じゃないわけで。こんな会話のラリーには慣れている。
中身の無い言葉に、中身の無いツッコミで蓋をした。
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豆大福(プロフ) - akariさん» 気付いて頂けて嬉しいです。あのお話のモチーフにさせて頂きました〜！これからも少しだけ要素は取り入れるので、引き続き読んでいただければ幸いです！ (2021年1月14日 16時) (
レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
akari(プロフ) - コメント失礼します。違ってたら申し訳ないんですけど、アラシックの方ですか？？台風ジェネレーション、いい曲ですよね。大好きなんです！！ (2021年1月11日 23時) (レス) id: dcff645a31 (このIDを非表示/違反報告)
豆大福(プロフ) - *ゆ う*さん» たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます。そう思って頂けたら良いなと思いつつ書いたので、伝わって良かったです〜！これからもどうぞお楽しみください…！ (2021年1月9日 10時) (レス) id: 1465863246 (このIDを非表示/違反報告)
*ゆ う*(プロフ) - 最初から胸が締めつけられるいい感じの切なさで好きです。これからの二人の関係の進展も気になるところです。甘いのも良いですがちょっぴり切ない物語もいいなぁと思わせてくれる作品ですね！お気に入り登録したので更新楽しみにしています！ (2021年1月7日 20時) (レス) id: a6ab41580b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆大福 | 作成日時：2021年1月7日 19時
