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美代子さんというのは私と同じ時間帯くらいに働いている女性ウェイトレスだ。この間たまたま、追田さんにそう声をかけられているのを見かけたのだ。彼女は丁寧に断っていたが。
「バレてたのか……これは失敬」
「いえいえ。お気持ちはありがたいですよ」
にっこり笑ってそう言うと、彼もにっこり笑った。別に、彼は本気で私や美代子さんとどうにかなりたい訳ではない。これは単なる軽口だった。
その時、私ははっと思い出して、慌てて通りの向こうを見る。さっきまで観察していたカフェの席には、もう誰も座っていなかった。ああ、しまった。見失っちゃった。
「どうかした？」
「あ……いえ、友人が、いたと思ったんですけど……気のせいだったみたいです」
「そう？」
私が何だか必死に向こうを見ているので、気になったらしい追田さんは私に尋ねた。それを曖昧に笑ってごまかして、小さくため息をついた。心配だけれど、こうなってしまってはどうしようもない。一応ライムだけは送っておこうかな……。
「追田さんはこれから飲むんですか？」
「いいや、もう帰るところだよ。さすがに少し寝ないとね」
「そうなんですか、おやすみなさい」
会釈をしたところで、タクシーが走ってくるのが見えた。バーの前で止まる。
私は追田さんとさよならをして、車へ乗り込んだ。運転手に自宅を告げて、背もたれに寄りかかる。
蛍介くんに、こんな深夜に何をしてるの？ とメッセージを送った。タクシーに揺られている間じっと画面を見つめ返信を待ったが、とうとう既読も付かなかった。
＋
そして今、私はやはりあの時声をかけに行くべきだったと、後悔して頭を抱えたくなった。
昼休みの食堂、私はこの日ようやく彼の姿を確認できた。蛍介くんは建築学科のメンバーと一緒に食堂へやってきた。一目でいつもの状態と違う事は分かった。
喋り方が違うし、何より私服だ。いくら私服OKのファッション学科と言えど、彼がそんな登校の仕方をした事は一度もない。
一体どうしたんだろう。やっぱり夜中に見かけた時、何かあったのかな。
遠目から心配に思って見ていると、蛍介くんはやってきた学年主任の先生に掴まった。会話を聞いてみれば、どうやら酒を飲んで学校に来たらしい。おまけに高級クラブだって？
ますます分からない。そんなところ行くような子じゃないと思うんだけど……。
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影裏(プロフ) - 更新待ってます！！！ (2022年5月3日 15時) (
レス) id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
0326 - とても面白いです。文章描くのとても上手ですね！更新楽しみにしています^^* (2018年2月23日 1時) (レス) id: f3b78f89c1 (このIDを非表示/違反報告)
奈々 - 最高の一言につきます！この先どうなっていくのか楽しみです！更新待ってます！ (2018年1月10日 16時) (レス) id: a037ebd2da (このIDを非表示/違反報告)
箱 - 初めまして。いえねこさんの作品とても素晴らしいです。更新心待ちにしております。 (2017年10月18日 0時) (レス) id: 72bdba217f (このIDを非表示/違反報告)
真昼(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！ (2017年10月5日 21時) (レス) id: 5967a7b00f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いえねこ | 作者ホームページ：http://twitter.com/ieneko_Z
作成日時：2017年9月8日 1時
