26.酒は飲んでも呑まれるな ページ3
「Aちゃーん！ ごめん帰るついでにゴミお願い！」
「あ、はい、分かりました！」
鞄を肩に掛け、ずっしりと重たい大袋を両手で持ち上げる。
外に出るとひんやりと冷たい夜気が肌に張り付いた。日はまだ昇りそうにないが、もう1､2時間もすれば東の空が明るい青に変わり始めるだろう。
泥酔したサラリーマンが道端で潰れて寝転がっている。
私はその横の路地を入ってバーの裏手に回り、ゴミ袋が積み重なるその場所に重い袋を持ち上げ、重ねた。
ふうっと息を吐いて、大通りに戻った。
今夜はジャズバーでウェイトレスのバイトが入っていた。3時を回ってシフトが終わり、これから帰路に着く。夜明け前の空気は冷たく、風が吹けば容赦なく私の体温を奪わんとする。
そろそろマフラーを準備するべきかなと体を縮こませながら、私は電話をかけタクシーを呼んだ。
ジャズバーのオーナーも、居酒屋店の店長も、とてもいい人だ。帰りのタクシー代を出してくれている。どちらも私の事情に同情してくれているのかもしれないが、それでもとてもありがたかった。
タクシーを待つ間、バーの出入り口でじっと待つ。そんな時に、私は彼を見かけた。
向かいの通りのカフェに、見覚えのある顔が座っていた。初めは見間違いだろうと思ったが、よく見れば見るほどそれが見間違いでない事が明らかになる。蛍介くんだ。
私はとても驚いていた。今の時刻は午前の3時を回り、こんな時間に外を出歩いているのは夜遊びの酷い不良か、飲んだくればかりだ。彼はそのどちらにも当てはまらない。
蛍介くんは高そうなスーツを身にまとって、誰か男性と話し込んでいた。その男性に見覚えはない。学校の関係者では当然ないはずだ。親戚？ 友人？
私は焦っていた。正直、彼が夜遊びをする類の人間だとは今この瞬間もどうしても思えなかった。何かよくない事に巻き込まれているような気がする。どうしよう、ちょっと声をかけに行くべきだろうか。
わたわたとその場で惑っていると、私は自分の横に立った影に気が付かなかった。
「やあ、Aさん。今帰りかい？」
「えっあっ追田さん」
急に声をかけられて思わずびくっと肩が跳ねてしまう。そこに立っていたのはここのバーの常連の、追田さんだ。
「は、はい、今タクシーを待ってて……」
「そうなの？ よかったら送っていこうかと思ったんだけどな」
「……それ、この間美代子さんにも言ってましたよね」
「あれ」
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影裏(プロフ) - 更新待ってます！！！ (2022年5月3日 15時) (
レス) id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
0326 - とても面白いです。文章描くのとても上手ですね！更新楽しみにしています^^* (2018年2月23日 1時) (レス) id: f3b78f89c1 (このIDを非表示/違反報告)
奈々 - 最高の一言につきます！この先どうなっていくのか楽しみです！更新待ってます！ (2018年1月10日 16時) (レス) id: a037ebd2da (このIDを非表示/違反報告)
箱 - 初めまして。いえねこさんの作品とても素晴らしいです。更新心待ちにしております。 (2017年10月18日 0時) (レス) id: 72bdba217f (このIDを非表示/違反報告)
真昼(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！ (2017年10月5日 21時) (レス) id: 5967a7b00f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いえねこ | 作者ホームページ：http://twitter.com/ieneko_Z
作成日時：2017年9月8日 1時
