優しい忠告 ページ27
車を事務所に置いて、帰り道。
いつものように、徒歩。
いつものように、ついてくる気配。
どう隙を見せようか
どう機会を与えようか
どうすれば、自然か
最近はそればかり考えてる。
Snow Manの皆さんとは距離を置いた。
それで、大丈夫なはず。
彼らは守られるはず。
今日も結論が出ず、そのままマンションのエントランスに入る。
ここに入れば、気配は消える。マンションまで入ってくる勇気はないらしい。
ポストを覗くと、いつもの封筒。
触感を確かめる。今日はカミソリはなさそう。
開くとまた一言。
「無能は早く辞めろ」
無能で悪かったね。これでも精一杯やってんだ。
手紙はとっとけと言われてるから、とりあえず鞄にいれた。
ふと、見慣れた靴。
視線を上げると
A「大ちゃん…」
佐「こんばんは、Aちゃん。ちょっとお話ししてもいい？」
…そろそろ来るかなって、思ってたよ。
管理人さんが気を遣ってくれて、事務所の１部屋を貸してくれた。
狭いスペースだけど小さいテーブルと椅子があって。２人で向かい合って座る。
佐「回りくどいの苦手だからストレートに聞くけど…Aちゃん、危ないこと考えてない？」
A「なんですか、藪から棒に」
佐「ふっかからは、休みの日にポストを見張って手紙をいれる奴を見つけて尾行する、って聞いてる。けど、それ以外に…なんか考えてない？」
A「計画はそれだけですよ」
佐「…計画は、それだけなんだね。計画にないことは、あるかもしんないんだ？」
A「……なんでそういうとこだけ鋭いんですか…」
普段はそんなとこまで頭回らないじゃん。
だから人狼弱いんじゃん。
なんでこんなとこだけ。
気づいてほしくないとこだけ気づくの。
A「何もないですよ」
佐「…ほんとに？」
A「はい」
佐「……信じるよ？」
A「はい」
ごめんなさい。
嘘ついてごめんなさい。
そんな悲しそうな顔しないで。
ごめんなさい。
佐「…ん、じゃあ、いいよ」
A「はい」
佐「Aちゃん」
A「はい」
佐「Aちゃん、俺らはAちゃんが大好きだからね」
A「はい」
佐「Aちゃんを、傷つけるのは、許さないからね」
A「……はい」
佐「じゃあ、またね。ごめんね、夜に」
A「いえ」
佐「またね」
ぎゅっ
って、されて。
帰っていく、大ちゃん。
助けて なんて言っちゃいけない。
ごめんね、大ちゃん。
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作者名：まめ
| 作成日時：2022年12月25日 9時
