渡辺side ページ25
それきり、撮影に呼ばれてしまったから大儀さんの話は聞けなくて。気になりながら、撮影を終えた。
インタビューは午後からという事で、ケータリングを頂くことになった。
閂に連絡したら、まだ食べてる途中だからインタビューも終わったら連絡くれとのこと。
…職務放棄じゃね？それ…
まぁこっちとしてはいない方がいいから、いいんだけど。
大「お隣いいですか」
渡「あっ、勿論です、どうぞ」
席で食べていると、隣に来てくださった大儀さん。ちょうどいい、さっきの話が聞きたかったんだ。
渡「楠の話…聞かせてもらっていいですか」
大「ん？」
渡「あの…強くないって…」
大「あー。あいつね、自分に降りかかる事には強いのに、自分の周りになんか起こると途端に弱くなるんですよね」
渡「あー…」
大「万年２位の時は…まぁ凹んではいたけど。けどそれより、クラスの子が他校と小競り合いして傷つけられたときとか、凄かった」
渡「へぇ…」
大「周りになにか起こった時、それにちょっとでも自分が関わっていると…そんな事ないのに、全部、自分のせいだって思っちゃうんですよね」
渡「わかります」
大「ってことは今も変わってないんですね笑 もとが陰キャだからか…うわー！って泣く事はないんですけど…泣くのこらえるんです、めっちゃ可愛いんですよね」
渡「…わかります」
大「泣かないけど、泣いてるんです。一人で」
渡「…」
大「あいつ一人が好きなんで、一人で何とかしようとするんですよ。けど、独りになるのは嫌なんです。周りに傷が付いて、自分から離れていくのがいやだから、一人で戦うんです。戦える力、もってるから」
渡「……」
大「それが、強さだと言えますか？私は言えません。Aは、弱いと思う」
渡「…」
何も、言えなかった。
大「さ！インタビュー始まっちゃいます！食べましょ！」
何も。
.
.
その後、インタビューも終えて閂と合流し、閂の運転で家に帰る。
けど頭のなかは、楠の事ばっかりだった。
閂「しょっぴー！ちゃんと聞いてる？」
渡「は？」
閂「もぉー、やっぱ聞いてないっ！さっきの編集長とのお話がそんなに楽しかったんですかぁ？」
渡「別に…」
閂「編集長、楠さんのお友達だそうですねっ。お友達がストーカーに苦しんでるのに、よくお仕事できますねっ」
渡「……え？」
閂「あっ、もう着いちゃう！全然お話できなかったぁ！」
…なんで、知ってんの？
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作者名：まめ
| 作成日時：2022年12月25日 9時
