【wrwrd!】奪い合い【ut/rbr】 (ページ27)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:102,289 hit

| 詐欺師ページ27

sideロボロ

どこにもおらん。
走り続けたせいで乱れた息を、整える気にもならず次の目的地へ走り出す。
アイツと彼女が共通で知ってる場所を見て回っても見つかる気配すらない。
と、なると、導き出されるのはひとつしかない。

喉から血の味がするが構ってられない。
水すらのむ時間が惜しい。
俺はアイツの家へ向かった。

ーーー
ピンポーン
安っぽい機械音がエントランスに響く。
｢はーい誰ですかー｣
間抜けた声が聞こえ、イラッとする。
｢おい、俺や。開けろ。｣
｢え、ロボロなんでそんなに怒ってんの？｣
ここまで来てしらを切るかこいつは。
怒りのあまり歯を強くかみ締めた。
｢そんなんお前が1番わかっとるやろ。メールでA呼び出したやろ。｣
俺の言葉に一瞬大先生は黙った。すると
｢Aちゃんはここにはおらんよ。｣
諦めたかのようにそういった。
｢うるさい。お前の言うことなんか信用出来ると思ってんのか。｣
｢分かってる。開けるから入ってきていいよ。本当にいないけど。｣
そう言うと、目の前の自動ドアが開いた。

おかしい。
探してきた感じからして、多分ここ以外にAがいるわけが無い。なら、俺を殺すための誘導とか？
護身用で忍ばせているナイフを服の上から握る。
出番は無い方が助かるんやけどな。
暗い気持ちを隠せずに俺は階段を登った。

ーーー
ガチャっと開いたドアからはかなり濃いタバコの匂いがする。
片付けられていない食器も、衣服も。
この汚い部屋が消えたもう1人の主人の存在をものがたっていた。
｢めっちゃ汚いな｣
｢まぁ、Aちゃんが居なくなればこのザマよ。
正直、Aちゃんのいないこの部屋は汚れてもいいと思ってるけど。この部屋には戻ってきてくれないし。｣
視線を落として会話する大先生は普段の大先生だ。
でも違う。こいつは確実にAを呼び出している。
｢で、ここにAがいないのはわかったけど、どこに連れてった。｣
大先生をキッと睨むと、焦点が合ってるのかあってないのか分からない瞳で見つめ返された。

｢知らん。確かにAちゃんにロボロのスマホ使ってメール送ったのは確かやで。で、Aちゃんは一旦ここに来た。でも...俺はもう振られたんや。｣

その声は震えていた。

｢Aちゃんな、大学行ってなかった間に好きな人出来たみたいでな。脅してくるような奴はもう要らんのやって。｣
不意に、大先生から涙が落ちた。
すると決壊したようにボロボロの涙がこぼれ落ちる。
｢好きな人出来てしもうたらどうしようもないやんなぁ...｣

大先生はひたすら泣いていた。