【wrwrd!】奪い合い【ut/rbr】 (ページ3)

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悪い癖ページ3

大先生は笑っていた。
視線や仕草は不安を表していたが、大先生は笑っていた。
それは彼の高校時代からの悪い癖で、笑って全てを誤魔化そうとしてしまう。
自分の気持ちとかも誤魔化す時はよくヘラヘラ笑っている。
彼も治したいといっていたその癖は最後まで治らなかったか…なんて思いながら彼の言葉を待つ。

『わ、別れ話とか？と、突然どうしたん。いつも普通に許してくれるやん。い、嫌やったなら本当に約束破らないようにするから。』
あからさまに声を震えさせる彼。
分かってるんだ。私の許容範囲から出てしまったこと、今からでは約束を守ったとしても許してもらえないことに。

怯える大先生に私は告げる。
どれだけ大先生が可愛そうでも意見は変えるな。
変えちゃいけない。
私は必死に無表情を保ち続けた。

「うん。大先生の言った通り別れ話。で、分かってるでしょ？もう何も許せないよ。」
そんな私の態度に大先生は辛そうにしていた。
それでもやはり癖のせいで、口元は笑うかのように弧を描いていた。
「譲歩した約束も守ってくれないし、私の夢も叶えるつもりのない人とはもう一緒に入れないや。」
すると、大先生はその言葉が引っかかったようで
『Aの夢…？』
と疑問そうにしていた。

その事に私は過去1番のショックをうけた。

お嫁さんになりたい。
それは私の小さい頃からの大切な大切な夢で、
そんなもの普通になれるでしょ？。とか
完全否定はされなくても、受け流されてしまうものでもあった。
私はそれでほんのちょっと悲しくて、少し俯くと横から大先生が言ったのだ。

『お嫁さんになりたいんか？
ええやん。Aちゃんなら可愛いお嫁さんになって良い家庭作ってそうやな。』

いい笑顔をして、俺の嫁になってよ。なんて付け足されながら。
別にこれで付き合った訳では無かったけど、
これがあったから告白をOKした所はあった。

私の夢を受け流さなかったのは大先生が2人目だった。

安い理由かもしれない。
でもそれで私は大先生に心を許せたし、
大先生の全てを許せた。

私の夢をちゃんと見てくれることは、
私にとっては何よりも大事なことだったから。

でもそうなんだね。鬱先生。
鬱先生はもう、私の夢も忘れたんだ。
わかりやすい夢なのに。
鬱先生にとってはなんてことない事なんだよね。
数いる女の子の中の1人の夢なんだね。

これくらいでキレるとかウザイって分かってる。
でも、そこだけは譲らない。譲れない。

「それも忘れたんだね鬱先生。
本当に最後まで最低だね。」

そんな私の言葉に今日初めて鬱先生の顔が歪んだ。