葛藤 ページ46
亜嵐と別れてマンションに戻って来た玲於。
自分の部屋がある階のボタンに指を伸ばしたのに、一つ上の階を押していた。
掃除の行き届いたフロア。
キュッとスニーカーの音を立てる。
意図せず、Aの部屋の前に立っていた玲於。
インターホンに触れる指先。
言えなかった…
Aと付き合ってるって…
あんな顔の亜嵐くんは…
見たことがない…
本気なんだ…
本気でAのことが好きなんだ…
押せばいいだけなのに、その手をゆっくり下ろした。
小さなため息。
感情を表に出した瞬間から…
俺も背負うと決めたのに…
Aが持ってる重たいもん…
分かってて手を伸ばしたのに…
亜嵐くんのあんな顔見たら…
言えなかった…
RO「俺…ずるいな…。」
とぼとぼと後にするAの部屋。
非常階段から下に降りると、自分の部屋に戻った。
玲於がそこまで来てたなんて知らないA。
涙が落ち着けば頬を拭う。
「ごめんなさい…。大丈夫…。」
栞から離れると、鼻を思い切りかんだ。
SI「A…。佐野くんと何かあったの…？」
「………好きだって……付き合おうって言われたの…。」
SI「佐野くんがそう言ったの…？」
「……ん。」
SI「そう…。」
あの話を聞いても尚…
あの子を受け止めてくれるの…？
結末は最悪かもしれないのに…
手の中いっぱいになったティッシュをゴミ箱に捨てると、ピアノのある部屋の扉を開く。
静かに腰を下ろして蓋を開けた。
SI「あなたは…どうしたいの…？」
「……私に…選択肢なんてあると思う？(笑)」
引き出したピアノ。
切ない音色が響き渡った。
SI「諦めるの…？」
悲しい音色が、激しい音へと変わる。
SI「佐野くんは…受け入れてくれるかもしれない。」
答えもせずただ弾き続ける。
SI「あなたにも幸せになる権利があるのよ？」
目を閉じてピアノの音に身を委ねるA。
栞は、聞いてるのかどうか分からないAの腕を掴んだ。
ピタッと止まった音。
「私に…どうしろって言うの…？」
目の前の幸せを優先して…
玲於くんを泣かせるなんて…
私には出来ない…
SI「あなたらしくない…。」
手の中にあるのは絶望…
でも…
ほんの一筋の光がまだ見えてるなら…
SI「諦めちゃだめ…。」
栞の手をそっと解くと、Aはまた奏で出す。
その音色は、玲於の部屋にも届いていた。
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mamari(プロフ) - りなさん» 以前も読みに来てくれてましたよね。ありがとうございます！ (2018年10月25日 18時) (
レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - やっと付き合えた！って思ったのに...。どんな風になっていくのか気になってしょうがないです（笑） (2018年10月25日 2時) (レス) id: 12a3518566 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mamario | 作成日時：2018年10月13日 19時
