未来 ページ41
数日後。
東京芸術大学の一室。
Aはピアノを奏でる手を止めた。
小さな椅子から立ち上がって窓際に立つと、外の景色を眺める。
もう見慣れた中庭。
1組の学生が駆け寄ってくる。
嬉しそうに声をかけあって、男性が女性の肩をそっと抱くと、楽しそうに歩いて行った。
無意識にそっと撫でた唇。
キュッと摘んだ。
頭に蘇らせてしまう。
あの時のこと。
お互いの体温を残して離れる唇。
玲於は、細い身体を軽く抱き寄せた。
RO「なぁ…俺たち…付き合わないか…？」
「……え。」
コロンの匂いが離れると、優しく微笑む玲於。
「……私は。」
RO「似たもん同士だからさ、めっちゃ喧嘩すると思うけど、それも悪くねーよ。きっと。」
俯くA。
人並みの幸せなんか望んだって…
私たちに待ってるのは…
悲しい未来しかない…
そんな意味の無いことを…
させられるわけが無い…
フッと笑うと顔を上げる。
「冗談(笑)」
玲於から離れてキッチンを出る。
「誰にでもそういう事言ってると、痛い目見るわよ？(笑)」
テーブルの上の鍵。
小さな手で握ると差し出した。
「もう行って。お仕事に行く支度、しないとね。」
Aをジッと見つめていた玲於。
ゆっくり近付いて手を伸ばせば、掌に落とされた鍵。
RO「それが、お前の返事か？」
「悪いけど、芸能人の女なんて安っぽいのはごめんなの。浮気されて捨てられるのは勘弁だわ(笑)」
言ったそばから背を向けた。
どんなに嫌われてもいい…
どんなに嫌な女だと思われたって…
どんなに…
頭の中の自分の言葉を遮るように、そっと回された腕。
小さな背中を抱きしめた。
RO「俺も…俺を軽く見られるのはごめんだな…。」
ピクンと身体が反応するのが伝わって来た。
RO「やる前から諦めて…そうなってもないのに決めつけてる。」
耳元にかかる吐息と一緒に囁かれる言葉。
RO「22年生きてきて…俺から好きだと言った女は…お前が初めてだ…。」
お見通しなんだよ…
強がって…
俺に嫌われて…
それで全てが丸く収まると思ってる…
でもそれは…
自分の為じゃなくて…
俺のためだろ…？
下手くそな芝居だよ…
RO「俺に…お前の時間を預けろ…。」
未来を…
描きたくしてやるから…
諦め悪くしてやるから…
だから…
RO「俺の傍にいろ…。」
小さく震える身体。
「バカ…。カッコ…良すぎ…。」
玲於はフンと鼻を鳴らした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mamari(プロフ) - りなさん» 以前も読みに来てくれてましたよね。ありがとうございます！ (2018年10月25日 18時) (
レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - やっと付き合えた！って思ったのに...。どんな風になっていくのか気になってしょうがないです（笑） (2018年10月25日 2時) (レス) id: 12a3518566 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mamario | 作成日時：2018年10月13日 19時
