言いがかり ページ22
時代を感じさせる建物の階段を駆け上がる。
沢山の扉が並ぶ廊下。
小窓から中を眺めても人の姿はない。
それでも、確かに聞こえているピアノの音色。
脇の階段をもう一つ駆け上がる。
下の階とはまた違う景色。
日差しがよく射し込んでいた。
突然。
ピタッと止んだピアノの音。
もれ聞こえてくる声はAだった。
「何の用？」
※「なんの？分かってんだろ。」
「何度来ても同じよ。答えは変わらない。」
※「分かってないのね。自分の立場。」
「立場？危ういのはあなた達でしょ？」
話し声に引き寄せられるように、静かに近付いていく。
そっと中を覗くと、グランドピアノを挟んで、Aと何人かの学生が対峙していた。
※「そうよ…。あんたさえ居なければみんなハッピーエンドだわ…。」
「私が居なくたって、選考会に通るのはわずか。あなた達にその実力があるとは思えない。」
※「それでも…マシなんだよ！」
「私を引きずり下ろしたかったら、実力で来るのね。下手の遠吠えほど無様なものは無い。」
※「知ってるんだから…。」
「何を？」
※「国内のコンクールは負け無し。クイーンと呼ばれる由縁。だけど、外には出ない。」
「それが？」
※「あんた、病気持ちでしょ？」
ピクンと揺れる眉。
※「飛行機に乗れないから、海外には行けない。」
「…だから？」
※「どんなに実力があろうと、海外に出られないクイーンは、もうお払い箱なの。」
※「話題作りもできない。でもしつこく出てくるから受け入れざるを得ない。可愛そうなのはどっちかな？同情と情けさ。」
嫌な沈黙。
対峙している学生たちは、勝ちを意識するようにほくそ笑んだ。
「終わり？」
※「は…？」
「飛行機に乗れないんじゃなくて、飛行機が嫌いなの。」
小さい身体で見下ろすような目付きで口元を緩めたA。
「出どころの分からない噂で脅しに来る暇があったら、私より弾きなさい。じゃなきゃ、下手は一生治らない。」
クッ…と唇を悔しそうに噛むと、音を立てて出て行く。
海外に出られないクイーン…
話題作りも出来ない…
お払い箱…
同情と…
情け…
小さな手が拳をギュッと握りしめた。
こみ上げる苛立ちにも似た感情を、深呼吸でやり過ごす。
キュッ…
とスニーカーの音がして顔を上げる。
「………玲於…くん…？」
ゆっくり開かれた扉から姿を見せた玲於に、驚いた顔をした。
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mamari(プロフ) - りなさん» 以前も読みに来てくれてましたよね。ありがとうございます！ (2018年10月25日 18時) (
レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - やっと付き合えた！って思ったのに...。どんな風になっていくのか気になってしょうがないです（笑） (2018年10月25日 2時) (レス) id: 12a3518566 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mamario | 作成日時：2018年10月13日 19時
