小さな背中 ページ16
検査に連れ回される玲於を、ロビーで待つだけの時間。
そっと胸に当てた手。
ドキドキ…
してる…
Aって…
玲於が…
Aって…
初めて…
呼ばれた時みたい…
キュッと立つ音。
落としていた視界に入る、病院のサンダルに顔を上げた。
RO「ごめん…。」
「あっ、玲於…。」
何故か慌てて立ち上がった。
私服から入院着に変わって、ほんの少し疲れた顔で微笑む。
RO「一緒に、なんて言ったのに、待たせただけだったな。」
「ううん…。大丈夫だったの…？」
RO「大丈夫だよ。俺、結構頑丈に出来てんの。」
「そっか。」
RO「だてに鍛えてねーって。こんなんで倒れてたら、フェスなんか勝ち上がれねーし。」
青白い表情がパアッと明るくなった気がして、微笑むA。
RO「でもま…もうしばらく入院みたいだから…。」
残念そうに言う玲於に、小さく頷いた。
「ちゃんと治さないとね。」
RO「まぁな…。」
「じゃあ。私、亜嵐くんのとこ行くから。帰るね。」
RO「ん…。ありがと。」
小さな背をゆっくりと見せる。
一歩を踏み出そうとした直後。
温かな感触が背中を抱きしめる。
鼻をくすぐるAの匂いに目を閉じる。
RO「次は…いつ来てくれる…？」
耳元で囁いた。
RO「明日…？明後日…？」
意外とたくましい腕。
小さな手がそっと乗っかる。
「明日…来るから…。」
RO「…約束…な。」
解く腕の中で振り返るA。
不安そうな表情の玲於を見て笑って見せた。
「約束。」
差し出される小指。
細い小指が絡むと、その指先をキュッと握られる。
RO「俺さ…。」
なかなか来ない次のセリフ。
「何？」
首を傾げるA。
「玲於？」
キュッと唇を噛んで顔を上げる。
RO「一日も早く退院すっから。」
だから…
RO「退院したらさ、デートしようぜ。」
だから…
RO「そうだなー。どこがいいかな。映画とか？」
だから…
「初めてのデート、映画だった。」
RO「え、あ…。じゃあ…。」
「遊園地！」
RO「え…。」
「ジェットコースター大好きなんだ。」
RO「…マジか。」
引きつった苦笑い。
「無理しないで、ちゃんと治してね。」
RO「ん。」
「じゃ。」
小さくなっていく背中。
側にいて…
言葉に出来ないまま。
怖いんだ…
一人になって…
しまう気がして…
何故だかジワッと浮かんだ涙を、手の甲でグッと拭った。
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しをちゃ(プロフ) - 久々読み返させていただいてただただ泣きました！ほんと素敵なお話でした！ (2019年6月25日 12時) (
レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
片寄みゆな(プロフ) - あぁ感動泣きすぎてやばいです、、、笑 (2018年9月9日 2時) (レス) id: c5f011830b (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - まぁさん» ありがとうございました。geneのワイワイした感じって彼らの代名詞みたいなものですよね。なので欠かせなかったです。個々の印象とも遠からずで書けたのではと勝手に思っています。次回作ももう構想があるので、近いうちに形にしていけたらまた是非読みに来て下さい (2018年7月3日 23時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - りなさん» 最後までお読みいただきありがとうございました。楽しんでいただけたのなら嬉しいです。 (2018年7月3日 23時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - 完結おめでとうございます！私も玲於君が大好きなので、更新を楽しみに読ませていただいてました。GENEの仲良しな感じもリアルとだぶってとっても面白かったです。また是非新しいお話もお待ちしてます！ (2018年7月3日 10時) (レス) id: 3f78a71996 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mamario | 作成日時：2018年6月12日 18時
