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朝のインターホン ページ13

翌朝。


コンコン…

まだ静かな病院にノックの音。

返事が戻ってくる前に開かれた扉から看護師の姿。


※看「佐野くーん。朝の検温…あら…?」


まくれた布団。

その上に放られた入院着。


※看「佐野くんっ!?」


引っこ抜かれた点滴針の先端には、ほんの少し血が滲んでいた。


※看「大変!!」


そう言って、看護師は慌てて病室を飛び出して行った。


夜通し降った雨。

その匂いを名残に、草木から水滴を滴らせる。


曇が覆っていた空から、射し込む光。


住宅街の中。

見上げた大きな戸建て。


玄関ポーチに足を踏み入れて、扉の前で持ち上げた指先を躊躇わせた。


フゥ…と大きく息を吐いて押すインターホン。


ピンポーン…


静まる空間がその音をハッキリ聞かせてくれた。

早朝だからだろうか。

なかなか応答されなくて、もう一度鳴らす。


しばらく待って。


「…はい…。」


ゆっくりと開かれる。

小さな隙間から、眠たそうな顔のA。

毛先についた寝癖に心をくすぐられた。


RO「…お…おはようございます…。」

「玲於…?」


一気に頭を起こされて、Aはガバッと扉を開く。


RO「ごめんなさい…。朝早くに来て…。」

「どうやって来たの…?」

RO「え、あ…歩いて…。」

「歩いて!?」


バスに揺られなければそれなりの距離。


「と、とにかく上がって!今、病院に連絡を…。」


慌てて奥に引っこもうとするA。

玲於はその細い腕を引き止めた。


「玲、玲於…?」

RO「自分で帰れる…。」

「でもっ、連絡だけでも!」


離されない腕。


RO「俺がお前に会いたくてきたんだよ!」


大きな声に驚いて振り返る。


みんなが言うんだ…

忘れたままなんてダメだと…

早く思い出せと…

でも…

どんなに考えても…

俺の頭の中には何も無いから…

だから…


RO「お願いが…。」


掴まれていた腕が解放されれば、ジンジンした。


RO「病院に…来て欲しい…。」

「…え。」

RO「毎日じゃなくてもいいんだ!時間がある時でいいから…。」


まだ青白い顔でAをジッと見つめる。


RO「キミに…来て欲しい…。」


悩んでたって…

不貞腐れてたって…

無いもんはない…

なら…

知らなきゃならない…

キミを…


それでも…

どうしても思い出せなかったら…


RO「それを…伝えたかった…。」


もう一度…

好きになればいい…


眉間にシワを寄せるAに、玲於はとても優しく微笑んだ。

本能→←失くしたもの



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設定タグ:GENERATIONS , 佐野玲於 , 川村壱馬   
作品ジャンル:恋愛
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しをちゃ(プロフ) - 久々読み返させていただいてただただ泣きました!ほんと素敵なお話でした! (2019年6月25日 12時) (レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
片寄みゆな(プロフ) - あぁ感動泣きすぎてやばいです、、、笑 (2018年9月9日 2時) (レス) id: c5f011830b (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - まぁさん» ありがとうございました。geneのワイワイした感じって彼らの代名詞みたいなものですよね。なので欠かせなかったです。個々の印象とも遠からずで書けたのではと勝手に思っています。次回作ももう構想があるので、近いうちに形にしていけたらまた是非読みに来て下さい (2018年7月3日 23時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - りなさん» 最後までお読みいただきありがとうございました。楽しんでいただけたのなら嬉しいです。 (2018年7月3日 23時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - 完結おめでとうございます!私も玲於君が大好きなので、更新を楽しみに読ませていただいてました。GENEの仲良しな感じもリアルとだぶってとっても面白かったです。また是非新しいお話もお待ちしてます! (2018年7月3日 10時) (レス) id: 3f78a71996 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mamario | 作成日時:2018年6月12日 18時

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