一度だけ ページ41
大きな瞳をさらに大きく見開いて、固まってるA。
近すぎる壱馬の顔。
戸惑う瞳が見つめてしまう。
ずっと…
伝えたかった…
でも伝えられなくて…
伝えちゃいけないんだと思ってた…
俺たちが…
これからもずっと…
変わらずいるためには…
でも…
大きな掌が包む柔らかい頬。
さっきまでこぼしていた涙のあとを指先が軽く撫でる。
眠っていた時間の中で見ていたのは…
Aの事だけだったよ…
キスでぬれた唇。
親指がツーッと伝う。
だけど…
離れていくんだ…
壱ちゃん…
って呼びながら…
小さい時からずっと見てきた笑顔で…
遠くなって…
KZ「…ごめんな。心配かけて…。」
囁く声に何度も小さく頷く。
強がって…
大人ぶって…
自分を勝手に納得させて…
KZ「もう…大丈夫だから…。」
そんな事をしても…
どこかに行ってしまうなら…
遠くに…
行ってしまうなら…
目尻に残る涙が、思い出したように落ちる。
一度だけ…
一度だけでいいから…
KZ「……好き…だよ。」
素直に…
なりたい…
絡みついていた視線。
壱馬が目を伏せるとほんの少し唇を開く。
心地の良い感触を確かめた後。
しっかりと重なるキス。
喉に流れていくようなお互いの吐息。
A…
大好きだよ…
小さな頃からずっと…
ずっと…
壱馬の想いが身体中を駆け巡ると抜ける力。
重力に負けるみたいに、Aの瞼が落ちる。
指先に触れている布団をギュッと握りしめた。
同じ時刻。
亜嵐の店のビルの屋上。
淵から足を投げ出して座っていた玲於。
少しずつ街が眠りから覚めていく様子を、ただ眺めていた。
ギィ…と錆びた扉の音。
HT「毎日遅刻の常習犯が、こんな時間に起きてるとはね。」
RO「ここの景色、結構好きなんだよな。」
学校も気にせず騒ぎ倒した面々。
RO「みんなは？」
HT「まだ寝てる。」
フロアで重なり合って眠る姿を思い出して苦笑いした隼。
HT「今日も晴れるね。」
RO「そうだなー。」
ズボンのポケットに突っ込んだ手。
隼は玲於の後に立って言った。
HT「一人で何とかしようと思ってんなら…させないから…。」
RO「え？」
振り返る玲於の視線の先には、酷く真面目な隼の顔。
HT「何年一緒にいると思ってんの？」
フンと鼻を鳴らしてまた前を向いた。
RO「うざ。」
HT「結構。」
隣に座ってくる隼と顔を見合わせると、どちらからともなく笑いあった。
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片寄みゆな(プロフ) - 青色が裕太くんで、水色がりゅうとくんじゃないんですか？ (2018年9月8日 20時) (
レス) id: c5f011830b (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - ゆららさん» ありがとうございます。平日は仕事なので少なめですが休日は多めにと心がけてますので最後までお付き合いくださいませ。 (2018年5月7日 22時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ほんとに面白いです！！！更新待ってます！！ (2018年5月7日 1時) (レス) id: 2a1bcd5b7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mamario | 作成日時：2018年5月5日 10時
