父親 ページ5
小さな手を握って歩く見慣れた道。
陽はすっかり落ちて、灯る街灯。
亜嵐の店を出た玲於とA。
大きな戸建ての前で止まった足音。
RO「ここ…？」
「うん。」
温かい感触が自然に離れると、玲於は目の前の家を見上げた。
RO「でけーな…。」
「あがって…って言いたいんだけど…今日…お父さんがいて…。」
RO「いいよ。別に。」
恥ずかしくて伏せていた視線を持ち上げる。
「今日は、ありがと…。楽しかった…。」
RO「そっか。」
普段どんな会話をしていたのか分からなくなるくらい、言葉が出ない。
「あ…ありがと。送ってくれて…。」
RO「ん。」
「…あ…え…と…。」
視線を泳がせて、次の一言を探す素ぶり。
大きな手がポンと頭に乗った。
RO「また学校でな。」
「…うん。」
小さな肩をすくめるAを見て、ニッと笑う玲於。
RO「ほら、もう入れ。」
「気をつけてね…。」
RO「大丈夫だよ。遠くねーんだから。」
背をそっと押されて扉に手をかけると、振り返る。
RO「おやすみ。」
手を上げる玲於に、Aも軽く手を振った。
明かりの中に入っていくAを見届けて方向転換する玲於。
指先で唇を軽く撫でると、来た道を戻って行った。
「ただい…ま…。」
鍵をかけながら小さな声をかけるA。
靴を脱いでリビングの扉に近づけば聞こえてくる会話。
※父「そうワガママを言うな。これでも父親なんでね。娘を放置って訳にはいかないんだ。」
閉まりきってない扉。
隙間からもれてきた声。
※父「分かってる。すぐに戻るよ。あぁ。愛してる。」
扉にかけた手を引っ込める。
その場を静かに離れようとして一歩踏み出せば軋む床。
それに気づいたのだろう。
※父「すまん。娘が帰って来た。切るよ。うん。」
そう言った直後。
※父「A。帰ったのなら挨拶くらいしなさい。」
キィ…と音をさせて開いた扉から顔を覗かせる。
「ただいま…。」
ワンピースの裾を揺らして見せた姿に、父の顔色が変わった。
※父「…なんだその格好は。」
ゾクッとするくらいの声色にハッとした。
スッと立ち上がる父。
Aに近づくとワンピースの裾を摘まみ上げる。
※父「白いワンピースは着るなと言わなかったか…？」
「…ご、ごめんなさい。」
※父「誰と出かけた…？」
「と…友達だよ…。」
キッチンに入る父は引き出しの中からハサミを掴んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
片寄みゆな(プロフ) - 青色が裕太くんで、水色がりゅうとくんじゃないんですか？ (2018年9月8日 20時) (
レス) id: c5f011830b (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - ゆららさん» ありがとうございます。平日は仕事なので少なめですが休日は多めにと心がけてますので最後までお付き合いくださいませ。 (2018年5月7日 22時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ほんとに面白いです！！！更新待ってます！！ (2018年5月7日 1時) (レス) id: 2a1bcd5b7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mamario | 作成日時：2018年5月5日 10時
