温かい感触 ページ40
翌朝。
制服のまま、学校とは別の方角へ歩き出すA。
通学の時間より少し早くて、すれ違う制服もいないまま、辿り着いた病院。
外来で賑わっているロビーは静まっていた。
トントンと規則正しいリズムでやって来た大きな扉の前。
夢だった…
なんて言わないよね…
ドキドキしている胸に手を当てて一歩を踏み入れる。
全てのカーテンが開け放たれているガラスの向こうは別世界のよう。
数人の看護師が、白衣と話をする光景から視線を横に移せば、ベッドの上に身体を起こしている壱馬の姿があった。
コンコン…
小さなノック音。
ゆっくり首を動かす壱馬は、Aの顔を見て嬉しそうに微笑む。
(おはよう。)
Aの口が動けば
KZ(おはよ。)
壱馬の唇も揺れた。
見つめ合う視線。
ピンク色の看護服が近づいてくる。
点滴を触りながら壱馬に何か話しかけている。
照れくさそうにはにかむと、戻ってくる視線。
ベッド脇のカルテに何かを書き込むと、ガラスのこちらに顔を覗かせる。
※看「Aちゃん。」
ヒョイヒョイと手招いた。
壱馬を気にしながら駆け寄る。
※看「入っていいわよ。」
「えっ、でも…。」
※看「まだ朝早いしね。何より、壱馬くんの希望だから。」
前とは違う。
制服のまま入れてくれたガラスの向こう側。
ベッドの手前で足を止めるA。
看護師はポンとAの背を軽く叩いてその場を離れた。
KZ「…A。」
少し掠れた低い声が呼ぶ。
やだ…
なんで…
とびっきり…
笑顔でいたいのに…
笑おうとすればするほど、ボロボロこぼれ落ちる涙。
それを何度も小さな手の甲が拭った。
KZ「おいで。」
差し出される大きな手。
ゆっくり歩み寄って伸ばした手。
指先が触れるとキュッと握られた。
そっと引き寄せてベッドの傍らに座らせる。
KZ「そんなに泣くなよ…。」
「だっ…て…。」
苦笑いの壱馬。
KZ「ここにいるだろ？」
「うん…。」
KZ「足だってあるし。」
「う…ん…。」
KZ「ちゃんと生きてる。」
「う………ん……。」
声にできなくて、より一層涙が溢れて、震える肩。
怖かった…
壱ちゃんが…
いなくなっちゃったらって…
怖くて…
怖くて…
KZ「A。」
鼻をすすって持ち上げる、涙にぬれた頬。
スッと壱馬の顔が近づいたと思った瞬間。
えっ……
確かに温かい唇の感触が重なっていた。
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片寄みゆな(プロフ) - 青色が裕太くんで、水色がりゅうとくんじゃないんですか？ (2018年9月8日 20時) (
レス) id: c5f011830b (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - ゆららさん» ありがとうございます。平日は仕事なので少なめですが休日は多めにと心がけてますので最後までお付き合いくださいませ。 (2018年5月7日 22時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ほんとに面白いです！！！更新待ってます！！ (2018年5月7日 1時) (レス) id: 2a1bcd5b7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mamario | 作成日時：2018年5月5日 10時
