いい迷惑 ページ33
校長室から出て来たリク。
親を見送って溜息をつく。
下駄箱の上段。
壱馬の名前の札がぶら下がった靴箱をそっと開ける。
だいぶよれて傷んだ上履き。
カタンと閉めれば、名札が落ちた。
手を伸ばして拾い上げる。
RI「…壱馬。」
掌の中の名札をギュッと握るとしゃがみ込んだ。
人気のない昇降口で震わせる肩。
A…
怒るだろう…な…
そう思った瞬間ハッとした。
こんな事…
Aが知ったりしたら…
ガバッと立ち上がると、自分の靴を掴む。
つま先を突っかけると、壱馬の名札を握りしめて走り出した。
泣いているAを見ていられなくて、扉の向こうから出て来た玲於。
HT「玲於…。」
立ち上がる隼。
RY「A…ちゃんは…？」
目を伏せたまま。
口元だけ、微かに緩める玲於は、涼太の肩をポンと叩く。
突っかけていたスリッパを擦って、みんなの視線の間を抜けていく。
その背中の悲しそうなこと。
MD「玲於…。」
角を曲がって、みんなの視線から外れれば足を止める。
なんで…
こんなことに…
壱馬…
俺はお前に…
お前を見て泣いてるAに…
なんて言えば…
その場にしゃがみ込んで抱える膝。
我慢していたものが溢れ出すのを堪えたいのに、勝手に震える身体。
馬鹿野郎…
巻き込まれやがって…
いい迷惑だよ…
ホント…
いい…
迷惑だよな…
誰もいない静かな廊下で、玲於は一人、静かに泣いた。
泣いているAにそっと手を添える看護師。
※「ごめんなさいね…。そろそろ…。」
鼻をすすってあげる顔。
立ち上がるAは頬の涙をグッと拭う。
「壱ちゃん…また…来るね…。」
申し訳なさそうに、退室を促す看護師に付き添われてガラスのこちらに出ると、振り返る。
穏やかに上下している胸。
生きていると告げている機械音に救いを感じてAは扉の向こうへ出て来た。
HT「あ…A…。」
玲於を見送ることしか出来なかった視線がAに集まる。
「玲於…くんは…？」
HT「病室…戻ったんじゃないかな…。」
小さな手をグッ握りしめて気丈に顔を上げる。
「何があったの…？」
集まっていた視線があちこちに散った。
「話したくなくても話してもらうから…。」
どうして…
玲於くんが…
みんなが…
こんなに傷ついてるのか…
どうして…
壱ちゃんが…
あんな…
頭の中で思い出すだけでも、胸が締め付けられそうだった。
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片寄みゆな(プロフ) - 青色が裕太くんで、水色がりゅうとくんじゃないんですか？ (2018年9月8日 20時) (
レス) id: c5f011830b (このIDを非表示/違反報告)
mamari(プロフ) - ゆららさん» ありがとうございます。平日は仕事なので少なめですが休日は多めにと心がけてますので最後までお付き合いくださいませ。 (2018年5月7日 22時) (レス) id: 93d184a48a (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ほんとに面白いです！！！更新待ってます！！ (2018年5月7日 1時) (レス) id: 2a1bcd5b7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mamario | 作成日時：2018年5月5日 10時
