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第三十三話 ページ45

「まったく、なんであんな子供の世話なんかしなくちゃいけないのよ」
「ね、ねぇ。やめようよ、そういうこと言うの」
傘を送り届けて、凛凪邸を去ろうとしたとき、メイド二人の会話が耳に入った。
咄嗟に身を隠したためどうやら気が付いていないらしい。別に隠さなくても構わなかったのだが、つい、反射的に、体が動いてしまったのだ。
単なる愚痴か。
人間、たまには鬱憤を晴らさなきゃやっていけないものだ。
任務で当たればいいのに。そうは言っても、感情をコントロールできないと非常に危険だ。
苛立ちながらも、その場から消えようとした。
「あんたもそう思ってんでしょ?いい子ぶるのはやめてほしいんだけど」
ーーあんな不気味な子。

不気味

Aが”不気味”?

「美玖様に修行をつけてもらってるからって、大体、何であれがつけてもらえんの?明らかに媚び売ったわよ。当主様がいない(・・・)からって、実権握ったも同然だものね。いや!当主様がいてもいなくてもおんなじよ。娘も酷いけど、親も親よねーっていう?しかも今日もわざわざ美玖様が足を運ばれたのよ。絶対にやらなそうなことなのに。御寵愛されてるのネェ」
どんどんヒートアップしていく悪口は、悪口というよりも、暴言というのが正しいようになってしまった。
だがそこまで言うと、其れ迄が嘘のように、静かになった。
何事かと覗いてみる。
(A!?)
驚いたことに、そこには悠然とした態度で立つAが居た。
おかしい。
美玖は最初にとてつもない違和感を感じた。
あれは本当にAなのか?
出て行こうとしたその時、カッと目を見開き、言い放った。
「我が主を悲しませた阿保は貴様か」
唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえた。
自らを恐れる者を、殺意の篭った双眸で射抜く。
恐怖で、もう声が出ないようだった。
「答えられぬのか!この程度の殺気さえ克服できぬのか!?」
怒号に、メイド二人の肩が大きく揺れ、片方が音を立てて床に伏せた。罵詈雑言を発する同僚に止めるよう仕向けていた方だ。
「可哀想になーー」
そう呟いた瞬間、もう一人も力なく崩れ落ちた。
Aも、力尽きた。
雨が、先程よりも強くなった気がした。

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設定タグ:双星の陰陽師 , 水度坂勘久郎・雲林院憲剛 , 弓乃   
作品ジャンル:恋愛
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どこんじょう(処罰対象) - 弓乃さん» こちらこそよろしくお願いします! (2019年3月22日 21時) (レス) id: 45a23aa5e3 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» 遅れてごめん!明けましておめでとう!ID違うけど私だよ!今年もよろしくお願いします!!! (2019年2月3日 16時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 新年明けましておめでとうございます!今年も期待して続きを待っています! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 弓乃さん» いえいえ!ってか、じぶんのほうが頑張らなきゃいけないっていう...展開は重要ですのでじっくり考えてください!私はいつでも暇なのでいつまでも待てます!過去編は長くてもいいんじゃないかな?過去編って重要だし。頑張ってください! (2018年12月29日 17時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» どこんじょうちゃん!お久だね。今ちょっと展開を考えてて‥‥‥全然更新できてなかったんだけど、どこんじょうちゃんがそう言ってくれるなら頑張ろうかな。有難う。感心であってるよ。過去編長くてすまんね。才能、かぁ。私なんかは全然だよ、でもありがとうね。 (2018年12月28日 17時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弓乃 | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/novel/mamamitu/  
作成日時:2018年3月3日 20時

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