第二十七話 ページ39
広い昇降口を抜け、長ったらしい廊下を抜け、無駄に段数のある階段を抜ける。
三階にある職員室へ向かうと、丁度良く探していた人が出てきたところだった。
「膳所様!!」
勢い良く駆け寄り、美玖の名を呼ぶ。美玖は幼い頃から姉を見てきた師匠である。
「姉上が!姉上が大変なんです!」
ゴスロリ服の袖口を引っ張りながら必死に訴える。
美玖は混乱したように、けれども傘をしっかりと見つめていた。
「落ち着け、阿呆。手前、もしかして傘…か?」
「はい!それで、今中庭で姉上が男子生徒にっ…!」
そこまで言って、悔しさが込み上げてくる。自分の不甲斐なさにつくづく呆れる。
美玖はそんな傘を一瞥し、駆けて行った。慌てて後を追っていく。
一瞬垣間見えた、彼女の表情は、とても十二天将の位である者の余裕を感じられないものだった。
雨の音が先程よりも大きくなる。
ーー雨には、いい思い出なんて一つもない。
美玖side
弟が来た時は、流石に驚いた。
息も絶え絶えになりながらも、姉の助けを求めにやってきたらしい。
弟、傘とはたまに会う程度だったが、姉によく似た顔立ちでAの弟であるというのはわかった。けれど、問題はそこではない。Aが此処に居る、これが問題だ。
此処はダメだ。此処で会うのは、不味い。
雨に青陽院、もう最悪のシュチュエーションである。
傘を置いて一心不乱に駆け抜ける。途中から階段を降りるのももどかしくなり、窓から飛び降りたりもした。
「A!!」
十二天将の登場に驚きを隠せない男子生徒には構わず、弟子であった者に近寄る。
「A、じゃねえよ。誰なんだよ、手前!」
あの二つに加えて、別人のようなA。本当に今日はついていない。
目の前にいる少女、否、化け物を思い切り睨み付け、怒鳴る。
「面倒臭い。説明なら後でしてやるから、待ってな小娘。ったく、つくづく主も大変だな」
そう言うと、プツンと糸が切れたように、地面に崩れ落ちた。
美玖を小娘と呼んだことに、本人以外の全員が眼を剥いた。Aは弱小家の当主、対して美玖は天将十二家の当主であり十二天将大陰でもあり、更にはAの師匠でもあるのだ。恩知らずというか、恥知らずというのか。
「姉上!」
いち早く反応した傘が姉に駆け寄り、横抱きをする。当のAは、先程とは打って変わって、幸せそうに眠っていた。その様子に一息つきながらも、固まっていた男子生徒達を睨みつけ、冷たく吐き捨てた。
「失せろ烏合の集が」
なんとも、最悪な日だ。
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どこんじょう(処罰対象) - 弓乃さん» こちらこそよろしくお願いします! (2019年3月22日 21時) (レス) id: 45a23aa5e3 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» 遅れてごめん!明けましておめでとう!ID違うけど私だよ!今年もよろしくお願いします!!! (2019年2月3日 16時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 新年明けましておめでとうございます!今年も期待して続きを待っています! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 弓乃さん» いえいえ!ってか、じぶんのほうが頑張らなきゃいけないっていう...展開は重要ですのでじっくり考えてください!私はいつでも暇なのでいつまでも待てます!過去編は長くてもいいんじゃないかな?過去編って重要だし。頑張ってください! (2018年12月29日 17時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» どこんじょうちゃん!お久だね。今ちょっと展開を考えてて‥‥‥全然更新できてなかったんだけど、どこんじょうちゃんがそう言ってくれるなら頑張ろうかな。有難う。感心であってるよ。過去編長くてすまんね。才能、かぁ。私なんかは全然だよ、でもありがとうね。 (2018年12月28日 17時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弓乃 | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/novel/mamamitu/
作成日時:2018年3月3日 20時