ママチャリ放浪日記【OP】

日記７ ページ9

暫く緊迫した空気が漂う。騒がしかった店内も一気に静まり返り、皆息を潜めこちらに視線が集まる





「……悪かったな。おれァガキでも容赦しねぇんだ」


『……』



チューリップがゆっくりと引き金を引く。さぁどうしよ。平和ボケで有名な日本に17年間住んでいた人間が対処法なんて思いつくはずがない

ま、このまま死んでもいいか。思い残す事なんてないし…元の世界に帰れるかもしれないし…次のトリップはヒロアカか暗殺教室がいいな




銃口を見つめ少し口角を上げる。死ぬ間際だというのに…なんにも怖くない。大人しく銃弾を受け入れる覚悟をした、その時だった









"オートバトルモードに移行します"






『……ん？』





突如脳内に響いた無異質な声に首を傾ける。おーと、何だって？その瞬間、私の体は誰かに乗っ取られたかのように動いたのだ







＿パァン…！！




異変に気付かぬまま発砲したチューリップ。乾いた銃声が聞こえ、人々が大きく口を開き悲鳴を上げる









＿キィン…！！





だが、血飛沫が上がることも痛みが襲ってくることも無かった。何故なら…私が射撃を防いだから






『………お？…え？』



それもスプーンで。オムライスを食べる際に使用したもの。こんな話、誰が信じるだろうか……




スプーンで銃弾を弾いた。撃った側のチューリップも目を見開き驚いているが、1番の間抜け面はこの私。銃口とスプーンを交互に見た後、また首を傾げた





『……え？撃ちました？撃ちましたよね？空砲とかじゃないですよね？』



ありえない。盾とか剣とかで弾くのであればまだ格好はつくが……スプーンやぞ？食卓に普通に置いてあるスプーンやぞ？そんな高度なテク一般JKが持ち合わせてる訳ねーじゃん！




「……っ！？ふざけやがって！！」





＿パァン…パァン…！！






今度は2発。しかしまた耳元で金属音が鳴り響き、先程と同様痛みも来ない。こいつホントに撃ってるのか…と疑ったが、きちんとカウンターに銃弾がめり込んでた。ゴメンなさい









「なっ！？ありえねぇ…！！こんなガキが…！！」



『いや、私もびっくりです』






他人事のような会話だが、内心物凄く焦っているのは黙っておこう

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