ｶﾞﾛの黄昏

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まなみside


1度着替えるために部屋に戻る。

まっすぐｼｬﾜｰ室に向かい、つなぎを脱いで泥まみれの体を洗った。
泥が落ちた腕にうっすら残っている裕司君の名前と江口さんの名前。





そういえば私、江口さんさんの名前…





覚えてる？







ﾊﾞｽﾏｯﾄに足を下ろした時にｽﾞｷﾘと痛んだ。
そうだ、私怪我したんだ。
さっきは裕司君が気になって忘れてたけど、しっかりと赤く腫れていた。

湿布とかあったかな？
きっと事務所にはあるはずだ。
あとでこっそり取りに行こう。


急いで着替えて厨房に行き、怒っている彼女に声をかける。




『遅くなっちゃってごめんね』

ﾊ「あ！師匠〜、聞いてくださいよ！」

『ん？』



どうやら怒ってる理由は私じゃなかったらしい。良かった。



ﾊ「ﾎﾟﾙﾄﾞｿﾙｽｲｰﾄの富田様のﾃﾞｨﾅｰ、私達じゃないんですよ！」

『え？なんで？』

ﾊ「師匠も私も敵だから信用出来ないって」

『て、き…？江口さんは？』

ﾊ「言ったらすっごい怖い顔して出ていきました！きっと今頃殴り合いですかねー？ふふふ」




ふふふ、じゃないよ！
なんで止めなかったの！
急いで厨房を出て江口さんを探す。
ｽﾞｷﾘと痛む足なんて気にしてられない。
殴り合いなんてして怪我でもしたら…





『あっ、ﾋﾟｴｰﾙさん！江口さん知らないですか？』

ﾋﾟ「江口さんさんなら怖い顔してﾊﾞｰに向かいましたよ？」

『ありがとうございます！』




ﾊﾞｰに着くとまさしく修羅場。
江口さんの上に乗っかって掴みかかっている所だ。




『やめてください！』



上に乗ってる人(時貞)の肩をつかんで止めに入るが思いっきり突き飛ばされてしまった。





『きゃっ、った』

江「まなみ?!っ、お前‼」

時「あ、あいつが勝手に…」




しまった、と怯んだ隙に形勢を逆転させた江口さんは拳をあげた。



『だめ！』



慌てて駆け寄りその腕ごと江口さんにしがみついた。






『大丈夫だからっ、怪我したら料理出来なくなっちゃうからっ、だからっ』



ぎゅうとしがみついて、お願いだから、と何度も言う。
次第に江口さんの力は抜けていって、私を抱き抱えてその場に座った。




佐「何やってるんですか?!」




騒ぎを聞きつけてやってきた佐那ちゃんは、荒れた店内を見渡して更に驚く。
そして涙目になった私を見て、心配そうに眉を潜めた。

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