Climax二十七話 ページ27
剣戟、銃声。ひとつ剣を振るたびに、ひとつトリガーをひくたびに、二人は己の思いを交差させている。
己にしかない大切な思いを放射して、いつかそれが尽きるまで。
結局、持っている弾が全てなくなってしまったアンネが地面に膝を叩きつけた。彼女は低い呻き声を上げ、地面に這いつくばる。
恐らくは起き上がって来られないだろう。私はすぐに電話をして、公安やFBIの車を呼び寄せた。
すると、そうかからずに車が来る。
「はは……やはりあたしゃぁ……私は勝てなかったんだな……最後になァ、てめェに言っておきてぇことがあるんだ」
「……何?」
「てめーの心、殺してやるよ。せめて、てめーを殺せなかった私の手でな」
「どういう事?」
「私は知ってんだよ……てめーは此処にいるはずのないイレギュラー。てめーがいるとなァ、全部壊れちまうんだよ! てめーはなァ、今、既に全員の幸せを左右できるんだ……てめーの行動で誰かが死ぬ。てめーのする事で誰かが得をする! てめーも死ねる、相手も左右できる。おめーはなァ、神の能力を持ってんだよ」
「ぁ……」
私はここまでに、名探偵コナンという作品の原作をたくさん壊してきた。作者のみぞ知り、作者が導き幸せを紡ぐ物語は私に壊された。
私が壊したのだから、私には使役をする権利がある。私は、いわば作者になった。
勿論キャラクターも著作権も私の手にはない。だが、キャラクターの動きもその結末も、私の動きによって変わるのだ。
決められた運命も、私が「やめとけよ」と一言かけるだけで変わってしまうのだ。
気付いていなかった。事の重大さを。
怖い。怖い。怖い。
赤井さんを、安室くんを、コナン君を、少年探偵団のみんな、今までかかわった人たち全員を、私一人が救えるはずもない。
「えぇ、表情だぜ……私ぁ、それで満足だよ……そうだ一言付け加えておくよ、てめーがいなきゃあ私も消えねぇ。てめーは悪者とはいえ、確かに私を殺したんだ。殺したんだよ―――私はなァ、死刑確定なんだよォ! じゃぁなあ! 救世主!」
呆然としたままゆっくりと崩れ落ちる私を、アンネは最高に歪んだ笑顔で見ていた。そして、警官たちに引きずられて去っていく。
だが私は忘れない。彼女が去る瞬間の高笑いを。ずっと頭に響いている。
ハイライトの消えた私の瞳からぽろりと涙が零れる。カランと、剣が力なく落ちる。
―――あぁ、なんて無力なんだ。
私は、私は、
「ぁ―――」
え_?
嘘、何で。
―――声が、出ない。
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糖(プロフ) - maoさん» コメントありがとうございます。楽しみにしているといって頂けて嬉しいです。頑張って最後まできちんと終わらせる予定ですので、是非ご応援頂ければ幸いです<m(__)m> (2019年6月9日 23時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
mao - 続き楽しみにしています!更新頑張ってください!! (2019年6月5日 22時) (レス) id: ec98b22c92 (このIDを非表示/違反報告)
ぐらにゅー糖(プロフ) - 雪兎さん» バリバリ元気です(笑) (2018年6月7日 18時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - ぐらにゅー糖さん?元気ですか? (2018年6月4日 22時) (レス) id: b712ea93b0 (このIDを非表示/違反報告)
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