十六話 ページ16
それから私、安室くん、赤井さんは忙しく動き続けた。たまに綾瀬も私の制止の声を聞かず、強引に手伝ってきたりもした。しかも地味に少し手際が良い。
ずっと動き回ったり、ハッキングをしたり、寝なかったりと公安もFBIも私も、関係者全員が忙しい毎日を過ごしていた。
いつの間にか寝てしまった私の背中にジャケットがかけられていた、というエピソードは最も気に入っている話だ。あ、ジャケットは赤井さんのものだったよ。
「ぐむー……ギルドぉ……」
関係者ほとんどが商業ギルドのハッキングをチャレンジしてはいるが、そんなものは通用すらしなかった。そして現在パソコンを睨む私も勿論。
そんな毎日を過ごしながらも、私は言葉に表せない満足感を得ていた。
赤井さんと安室くんと共に仕事ができて、かつての世界の仲間と協力して、この原作にない結末を作り上げる。
これ以上幸せなことがあるものか。
このまま死んだっていいかもしれない。だって、最高の時間だったから。
―――私はわすれている。これを元の世界では、いや、この世界でも、フラグと言った。
ぴりりりり。
携帯が鳴る。そのいつも通りの着信音が、何故か今日は死の宣告かのように聞こえた。
私は焦って携帯を取り落としそうになりながらも、何とか向こうの音を聞き取る。
『Aさん! 公安、FBI、およびすべての関係者のコンピューターがハッキングを受けている! このままでは計画を進めるどころか、我々の持つすべての情報が漏洩してしまう!』
「安室くん、前も同じような事が起きたはずだよね、その時の情報は保護できてる?」
『最初から本気ではなかったようだ。完全な保護はできていない。公安とFBIの拠点にテロも起きている。じきにテレビにもひっそりと放送されるはずだ。見つからないところに拠点を置いているがために、気付かれるのが遅れるだろうが……!』
「わ、私も行きます。私の能力は赤井さんの三倍ですから! 能力もきちんと扱えるようになりましたし、食い止めるくらいは……」
『ダメです、Aさん』
穏やかに、冷静に、静かに。安室くんの言葉は――あまりにも自然に私の言葉を止める。
言葉を発せない私。
一文字一句を紡いでいく、安室くん。
『貴女には生きていてほしい。今、赤井がそっちに向かっている。……僕らに、任せてください』
「安室くん、安室くん! 降谷零―――ッ!」
私の電話越しの叫び声が―――安室くんに届くことは無かった……。
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糖(プロフ) - maoさん» コメントありがとうございます。楽しみにしているといって頂けて嬉しいです。頑張って最後まできちんと終わらせる予定ですので、是非ご応援頂ければ幸いです<m(__)m> (2019年6月9日 23時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
mao - 続き楽しみにしています!更新頑張ってください!! (2019年6月5日 22時) (レス) id: ec98b22c92 (このIDを非表示/違反報告)
ぐらにゅー糖(プロフ) - 雪兎さん» バリバリ元気です(笑) (2018年6月7日 18時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - ぐらにゅー糖さん?元気ですか? (2018年6月4日 22時) (レス) id: b712ea93b0 (このIDを非表示/違反報告)
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