降谷先輩。 【降谷零】

その12 ページ13

*°


あ、傘忘れた。


そう気付いたのは先輩と別れて、昇降口でローファーに履き替えている時だった。


午前中はもうほとんど夏の日差しが照りつけていたために忘れてしまっていた。


その上、普段なら折りたたみ傘を鞄に入れているが、2、3日前に使って家で干したっきりだった。


雨が弱まるまでしばらく待っていようかとも思ったが、ザーザーと音を立てながら降り注ぐ雨は止みそうになかった。


何か使えそうな物はないかと鞄の中を漁ってみたが、スポーツタオルくらいしか役に立たなそうだった。


この状況だとこれも役に立たなそうだけど…。


気休め程度ではあるがタオルを頭に被って思い切って走り出す。


走っていると特徴的な淡い髪色を傘からのぞかせる先輩が見えた。


｢お疲れ様でした｣


と、勉強のお礼も込めて声をかけて追い抜こうとしたが、それは叶わなかった。


気が付くと降谷先輩に腕を掴まれ引き止められていた。


あの…濡れるので早く帰りたいのですが…。


そう言おうとしたら、無理矢理先輩の傘に入れられ、逃げられないように手を掴まれたままだった。


そのまま連れられるがままに歩いていると、気付いたら"降谷"と書かれた表札がついている家の前だった。

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