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その18 ページ18





カウンター席の隅から隅まで並べられたたくさんの種類の料理たち。その全てがとても美味しそうでキラキラと輝いているよう。


「あのー…これは?」

カウンターの向こうのキッチンに立つ降谷先輩に声をかければ、手は動かしたまま顔だけをこちらに向けた。

「ポアロの新メニュー候補だ、どれがいいかと思って」

「あぁ、なるほどです。で、どうして私が?」

「お前が暇そうだったから」

「ちょっと1回殴らせてくれません?」

確かに間違ってはいない、間違ってはいないけど、この人は敢えて癪に障る言い方をするからムカつくんだ。


「残念ながらお前には無理だから諦めろ」

「ハイハイ。ところで、どうして先輩は私の個人情報を色々と知っているか伺っても?返答次第では即110番ですが」

「……企業機密だ」

なんですかその間は!!!やっぱり法に触れることをしているんでしょう!!!!日本警察はこんな人、今すぐクビにすべきです!!!


今度警察に密告してしまおうと考えてから、とりあえず私から見て一番左にあるザッハトルテだろうか、チョコレートコーティングされたそれを口にしようとフォークを手に取った。


「それではいただきまーす」


それを聞きつけたのか先輩は料理を作っていた手を止めて、ちょうど向かいでテーブルに肘をついて私の顔を覗きこんでいる。


フォークで切れ込みを入れれば、中のスポンジ生地のさらにその中からとろりと溶け出る焦げ茶色の液体。

その光景に思わずわぁ、と感嘆が零れてしまって、慌てて口元を抑えて降谷先輩の顔を見るとしてやったりといった顔をしていた。

してやられましたよ。ザッハトルテに見せかけて中身はフォンダンショコラとは。


スポンジにツヤツヤとしたその液体を絡ませて口に含めば、溶け出たソースはベリー系の酸味がしてチョコレートの甘みとうまく溶け合っていている。

重いかなとも最初は思ったけれど、ベリーを入れることで上手くそれを緩和してて、後味も結構サッパリしてる。

この人本当に警察なのかな?本業はパティシエとか料理人なのでは?私もそれなりに料理はできるけどこの人には及ばない。ムカつくけれど美味しいのは事実。


黙々と数口、口に運び続ければ黙って見ていることに痺れを切らしたのか

「感想を聞かせてくれないか」


と口を開いた。

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いちごきゃらめる(プロフ) - めちゃめちゃ面白かったです!続き気になります (2021年2月24日 3時) (レス) id: 654b6b5b60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:珠々菜 | 作成日時:2018年7月13日 0時

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