天剣と迅雷 (ページ7)

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六、華焔さんページ7

男は、志々雄一派のいる部屋に入ってきた。

華火やあかり、かがり、まいや宗次郎は襖の影から様子を見ていた。

「弘原海鮫兵団団長。
姓は一ヶ瀬！名は鮫男！」

「……………」

「赤猫楼の華焔。薩長の高官でもなかなか
相手に出来ないと話に聞く。今宵是非！」

「相手に出来ないのではなく相手にしないん
ですよ。明治政府関係者は全てお断りしてます故。」

華焔は明治政府が嫌いだった。

「んー。よくわからないがそれはつまり軍属の俺もか。」

「……………」

「よしならば身受けしよう。
客ではなく主人ならば断ることは出来なかろう。」

「……………！」

その時。

志々雄が立ちはだかった。

「何者だ。」

「客だよ。コイツの。」

「何用だ。」

「野暮用。」

「……………」

「そこどけよ。小便が漏れちまうだろ。」

一ヶ瀬は志々雄を知らないようだった。

それはそうだ。全身火傷なのだから。

「……その傷……大層な古兵者とみた。
京都？上野？会津？函館？それは何処で？」

「………」

「だが何にせよ……」

一ヶ瀬は黙った。
志々雄を斬っているところを想像していた。

「ー何にせよ。西南の役に無傷で勝った俺の様な強者の姿ではない。傷だらけは弱者の姿。
これからは武士でも志士でもない！
俺達軍人の時代！俺達がこの国を強くする！
女・子供・ついでに弱者！
弱者は全てを俺達強者に委ねて安心してれば可し！」

こいつは生理的に無理だ。と、まいは思った。

「来週また来る。
それまでに身受けの準備を進めておくんだ。」

そういって一ヶ瀬は帰っていった。

宗次郎が志々雄の側へ寄った。

「あの人マントの中に刀持ってますよね。
方治さんよりお金積んだのかな。」

「……………」

「殺気。飛ばしてましたね。」

ﾜｧｯ

華火とあかり、かがりが華焔に抱きついた。

「姐さぁん、身受けだって！
ここ(苦界)からでられるよぉ！！」

「おめでとおおおお！！」

ﾄﾞｯ

「！」

「良かったね姐さぁん！」

華火は涙を流して喜んでいた。

「………ありがと。」

華焔は、いまいち喜んでいない様子だった。