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そこから暫く、えらく長い時間、薮は自分の研究している超能力についての話を始めた。
若干7歳の僕には訳も分からず難しく、薮が何を言っていたかなんて記憶にない。
ただひたすら喋り続ける薮の声と、その香りは覚えている。
今思うと、僕の気を紛らわせようと、普段無口な癖に必死になって喋り続けてくれていたんだと思う。
暫く薮と2人でいたが、その内の他の先生たちも来て、そして僕は彼らに連れられて病室から出た。
「お母ちゃんは?…ねぇ、やぶ、お母ちゃんどこ?」
「お母さんは…もう会わないよ。」
「え…なんでぇ?お母ちゃん…っ」
必死になって抵抗するも、無理やり薮たちに腕を引かれて病院を歩く。
何度も母親のことを叫びながらとうとう病院の外に出て真っ黒な車に乗せられるその瞬間、母親の声が聞こえてきて振り返った。
「ヒカル…!この人殺し!お前は、お前はにいちゃん達も父ちゃんも殺した人殺しなんや!」
「お母ちゃん…?」
そこには病院の先生たちに押さえつけられながら泣き叫ぶ母親の姿があった。
「お前みたいな人殺しはうちの子供やない!」
「ねぇ、母ちゃんやだよぉ。ヒカル、行きたくない」
「うるさい!もう…母ちゃんはお前の母ちゃんやないんや!」
僕は薮に無理やり車の中に入れられ、そのまま耳も塞がれた。
「やだぁ、ねぇやぶ、僕お母ちゃんと帰る…っ」
「ヒカル…もう忘れるんだ。全部、忘れるんだ。」
「なんでぇ…ねぇ、なんで…」
そこで、僕は初めて泣いた。
今まで実感のなかったことが、母親のあの姿、母親の発言、そして母親との別れ。
幼い僕にとって母親は全てで、その母親からの拒絶は何よりも鋭く僕の胸に突き刺さった。
孤独の淵に立たされた僕は、藁をもすがる思いで薮にしがみつき、泣きさけび続けたのだった。
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「ヒカル、起きろ」
「ん…」
「着いたぞ」
車の開く音がしてゆっくりと目を開く。
薮の膝の上で寝ていた俺は、薮に抱きかかえられそのまま車を降りる。
「ここ…どこ?」
僕の田舎と遜色ないほど山の中にいることは、景色を見てだいたいわかった。
そして、目の前には洋館風の大きな建物や、見たことも無い大きな建物が何棟も立っている。
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まくま(プロフ) - 涼李さん» ご指摘ありがとうございます!すみませんでした!(>人<;) (2021年1月13日 0時) (レス) id: 74f2c0d3fa (このIDを非表示/違反報告)
涼李 - 失礼ですが薮の漢字違います。 (2017年4月4日 18時) (レス) id: cfabed38dd (このIDを非表示/違反報告)
まくま(プロフ) - natsuaさん» はじめまして、コメントありがとうございます(*^^*)そういっていただけると嬉しいです(*^^*)個人的におっさん×ショタが好きで…笑。しかもおっさん側は押されて断れず、仕方なく…的なシチュが好きです笑。もうしばらくティーンですが、徐々に大人にしていきたいです! (2016年12月17日 9時) (レス) id: 5a50ed067e (このIDを非表示/違反報告)
まくま(プロフ) - いのおりさん» こちらにもコメントありがとうございます(*^^*)やぶひかは私も結局1番好きなCPです!薮にはもっとヒカルくんを可愛がってもらいます!笑 (2016年12月17日 9時) (レス) id: 5a50ed067e (このIDを非表示/違反報告)
まくま(プロフ) - ひかひかさん» 妄想していただけて幸いです(*^^*)薮のオヤジ具合とヒカルくんの幼さを掛け合わせてこれからも進めていきたいと思います。 (2016年12月17日 9時) (レス) id: 5a50ed067e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まくま | 作成日時:2016年10月3日 20時