*ﾟ*金魚花火15*ﾟ* (ページ10)

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【４２０】side O ページ10

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昨日の夜は、新人の歓迎会だとかで。もう本当に、新人って年齢でもないからやめてほしかったんだけど

一次会、二次会、三次会……お前が主役だからと言われれば、帰るに帰れなくて

結局ずるずると最後まで付き合わされてしまった。

まさか自分が、こんなふうに不自由な社会のパーツのような場所に収まるとは考えたこともなかったけれど

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『大野さんって、恋人いるんですか～？』

智『恋人……はいないね』

『え、本当ですか！？』

智『うん、恋人じゃなくて妻がいる』

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なんですかもう、ちょっと期待したのに！と笑う、女性たちには申し訳なかったけれど

結構、似たようなやり取りが何回かあって。いい加減、相手にするのも面倒だったから

彼女たちの飲んでたグラスに睡眠薬を盛ったっていうのは、内緒の話。

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智「あんまり褒められた癖じゃないかもな……」

A「え？」

智「あ、ううん。何でもないよ(笑)

ついつい何というか、俺も手際が良くてね？」

A「手際が良い……？」

智「慣れ過ぎてて誰にも気付かれないってこと」

A「？」

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こっちの世界で生きていくのは、想像以上に大変そうだと思い知りながら

だけど今。不思議そうに俺の腕の中で、俺を見上げている彼女を見ていたら

そんな苦難はどうってことないように思えてくる。

Aちゃんとの平穏な暮らしを守るためなら、俺は不慣れな仕事でも人付き合いでも、何だってこなしてみせよう。

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智「――――！」

A「智さん…？」

智「ごめん、ちょっと急に思い出したことがあって。

仕事のことでね、ちょっと電話して確認してくるから待ってて？」

A「うん…」

智「イイコだ」

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Aちゃんの頬を撫でて、それから彼女を置いたまま布団から出た。

寝室のドアは、ちゃんと閉めて。少し着崩れている服を直しながら、気配を殺して玄関の方へと向かう。

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