*ﾟ*金魚花火15*ﾟ* (ページ6)

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【４１６】side N ページ6

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あれだけ紫穂さんを、自分の妻を遠ざけていた男が。ここまで態度を一変させるとは夢にも思わなかった。

まあ、もとはといえば好き合う２人なんだし？別に、批判する気も全くないんだけど。

紫穂さんが自分の隣に座るのを、ちら…と確認する視線の優しいこと

ウチの副組長ってこんな柔らかい表情ができる人だったか？と疑問が一瞬浮かぶが

………そうだ。もともと、本来の櫻井翔は、こういうまっすぐで誠実な人なんだと思い出す。

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和也「永遠に副組長を務めろって言うつもりはないよ、でも……。

今、アンタがいなくなったら組はガタガタだ。それぐらいのことが分からない翔ちゃんじゃないよね？」

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正直、彼がこんなふうに本来の良さを取り戻せるのなら送り出してやりたい気持ちは山々だけど

組長になったからには情だけで判断を下すべきじゃないことも理解していた。

きっと、副組長である翔ちゃんは今までに何度も、こういう場面に直面していて。そのたびに情ではなく論理と義務、使命で判断していたはずだった。

重荷だっただろうな、と改めて思う。

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翔「もう俺の身体が、駄目なんだよ。これ以上は動けないって悲鳴を上げてる。

誤魔化しきれなくなってきてる、ガタがきてるって感じかな。

こんな状態で副組長だなんて、お笑いだ」

和也「そう言われて、はいそうですか……とはいかないんだよね、こっちも」

紫穂「……あの、組長さん…私から、いいですか」

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小さな声で、紫穂さんが喋った。

隣の翔ちゃんの方を一瞬見た。話してもいいかと、確認するようなまなざしに

翔ちゃんは……はあ、と溜息を零す。駄目だとは言わない。

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紫穂「私……その……赤ちゃんが、できたんです……」

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ちょうど飲んでいた茶が、驚き過ぎて変なところに入って

盛大にむせる俺に「大丈夫ですか！？」と紫穂さんが慌てる。

苦しくて涙目になりながら、そうかと納得する。

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翔ちゃんにこの世界から足を洗おうと思わせた決め手は、これだったのか。

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