*ﾟ*金魚花火15*ﾟ* (ページ20)

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【４３０】side M ページ20

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報告を終えて、和也の部屋から退室する。

廊下を歩きながら、屋敷の様子を眺めていた。

今後の対応に追われる者、鍛錬に励む者、庶務をこなす者、雑談に興じる者―――。

見慣れない顔は、最近受け入れた別の組出身の連中だろう。

去っていく者。残される者。新たに来る者。

龍村組(ここ)は、誰にとっても温かい我が家(ホーム)であってほしいのだと

そう思っている自分が居ることに、気付いた。

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そうして歩いているうちに、通りかかったのは医務室の前だった。

智がいなくなって以来、ここの連中も以前に増してより一層、精進している。

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潤「邪魔するよ」

「松本隊長……！お疲れ様です！」

潤「ああ。頼んであった件は、どうなってる？」

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きっかけは、些細なことだった。龍村組では、年に一度、定期健診が行われている。

前組長の頃から続く、もはや恒例行事だ。組員の健康のことを気遣うなんていかにも“らしい”が。

身を引きたいと申し出ている副組長の現在の状態っていうのが、どうなってるのか。それが気になって過去の幹部の健診記録を見せてほしい、と頼んだ。

そのときに……たまたま、気が付いた。

いや、もしかしたら自分でも自覚がないうちに、意識してたのかもしれなかった。

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だって違和感を、拭うことができなかったんだ。

あの日。お嬢の成人式の、前日に感じた違和感を。

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和也はあの日、意識を失って倒れていた。それを俺が運んで布団に寝かせた。

昔話の後だ、精神的にきてたのかもしれないと思ったし。烈が乗り込んで来たり、色々あったし。

疲れているだけだと、思ったけれど。納得しようとしていたけれど。

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潤『……なあ、和也』

和也『だから、他言無用だよ』

潤『………』

和也『組長・二宮和也の一番の側近ってことでね……よろしく頼むよ』

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自分が倒れたことを、黙っておけと。

嫌な予感があったんだ。あの対応は不自然だったから。

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だから、副組長の健診記録を見た際に。和也の記録がないことを知って衝撃を受けたんだ。

和也が屋敷を出ていった夏から去年の秋、金龍が亡くなるまでの期間のがないのは分かる。

だけど、それ以前の記録すら存在しなかったんだ。

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