*ﾟ*金魚花火15*ﾟ* (ページ18)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:122,553 hit

【４２８】side M ページ18

・

・

志摩子『お願いがあるのよ』

・

・

それは、俺が最後にあの人と交わした言葉

・

・

潤『お願い……？』

・

・

あの人の想いを撥ね付けた俺に。それでも俺を愛せて良かったと笑ってみせたあの人が

ここを去ると決めたあの人が、残る者を思って託した願い

・

・

志摩子『和也を支えてあげてね』

潤『和也を…？』

志摩子『私は和也から兄を奪うわ。そして、想いにも応えてあげられないままにいなくなる。

ひとりぼっちで泳ぐあの金魚が、私との夏から出ていけるようになるまで

お願い。和也のこと、守ってやって』

潤『………責任重大じゃないですか。嫌ですよ、そんな重荷…』

志摩子『私のこと、拒んだんだから。せめてこのお願いぐらい聞いてくれてもいいでしょう？(笑)』

・

・

「案外、ちょっとは傷付いてるのよ？」……と志摩子お嬢様は苦笑した。

……罪悪感を感じなかったといえば、嘘になる。気まずかった。

・

・

潤『……分かりましたよ、でも必要以上に近付いて巻き込まれるのは御免です。

俺は、ただ見守るだけ。金魚がどこを泳いでいようが、どこまで沈もうが

見放したりしない代わりに、見てるだけで俺は何もしませんよ？』

志摩子『……それで、いいわ。今はそう言ってもらえるだけでいい。

見てるだけ、なんて傍観者のスタイルでいつまでもいられる人じゃない

潤はそんな冷たい人じゃないって、だから私は貴方に恋をしたのだと

胸を張って、私は言い切れるから』

・

・

・

潤「……貴女の言ったとおりになったな……」

和也「え？何か、今言った？」

潤「いいや、なんでもないよ」

・

・

見守り続けた男は、とても弱い男だった。

だけど、弱さは甘さ。甘さはとんでもないほどの優しさが起因していて

弱さが強さとなることもあるのだと、気付いたのも事実。

それでいいじゃないか、と思わせられた。従来の意味どおりの強さを兼ね備えた金龍や、副組長である翔さんのような、そんな人だけが頂点に君臨するような

それだけが、あるべき姿なんだろうか、と。

和也のような、弱さを強さに昇華させた男が頂点になっても

それはそれで、いいんじゃないか。

・

・

・