*ﾟ*金魚花火15*ﾟ* (ページ15)

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【４２５】side A ページ15

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雅紀「御前。……俺、貴方に憧れてましたよ。貴方のそういう一途なところ、心底」

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パン！……躊躇いは、しなかった。美しい御前の顔が、見るも無残な苦痛の色に覆われてしまう前に

綺麗なままで旅立たせてあげたかったから。

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花の名前は菫でも、藤でもない。それは鳥兜(トリカブト)という

日本三大有毒植物の一つにも挙げられる紫の花だ。

金龍の死を知った直後に躊躇わずに食べた彼は、組を抜けて。金龍の傍を離れて何十年と時が過ぎても

まだ、想っていたのだ。

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雅紀「………これで貴方は解放されましたか、御前。

申し訳ありません。見つけるのが、遅くなってしまって」

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額のど真ん中を貫いた穴から血が流れる。

御前の行方は探さなかったわけじゃない。でも、俺が隊長に就任してからもずっと分からなかった。

希代の情報屋が全力で雲隠れした、その彼を見つけることができた瞬間こそ

俺が情報屋として御前を初めて上回ったということで

これで本当に、俺は御前のことを蹴落として差し上げることができたのだ。

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“おめえさんが、あたしの息の根を止めるんだ”

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その瞬間を、あの時からずっと御前は待っていた。

カッと見開いたままの御前の目を、瞼に触れ。そっと閉ざす。

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和哉さんと翔ちゃん。ケンさんと潤のような師弟関係ではなかった。

だけど、この人のことは嫌いじゃなかった。

ぼと……と、その場に銃を落としてしまったのに拾い上げる気力が沸かない。

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“おめえさんは、あたしを踏み台にして飛んでいくんだよ”

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雅紀「……ええ、御前。そうしますとも」

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忘れるものか、と誓う。お嬢が俺に施してくれた愛も

金龍が俺を引き取ってくれた愛も

御前が導いてくれた愛も

Aお嬢様が語った愛というものも。決して忘れはしない。

龍村の屋敷を包み込んでいたものは、確かに愛(それ)だった。

だから、俺は―――。

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雅紀「………ちゃんと、譲ってもらいましたよ」

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もう、ここに用はなかった。組を抜ける時に何となく持ってきてしまった藤色の羽織を

ぱさっと御前に掛けて。山を、下る。

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涙を拭う必要などない。春風で乾くのだから。

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