*ﾟ*金魚花火15*ﾟ* (ページ13)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:122,550 hit

【４２３】side A ページ13

・

・

相変わらず、人間離れした容姿だと

それがかつての師と久しぶりの対面を果たして、まず最初に抱いた感想だった。

記憶にあるような黒髪ではなくなっていたが、さらさらと揺れる長い髪は、今は銀髪となり

変わらぬ菫色の瞳と相まって、一層、この人の魅力を引き立たせているようだった。

・

・

雅紀「……耳。よく聞こえるんですね」

美陽「………」

雅紀「やっぱり、聞こえなくなったというのは嘘でしたか。

俺が毒を盛っていたことも気付いてらっしゃいましたよね？」

美陽「………あたしの耳は、聞こえないよ。おめえさんに譲ったからね」

・

・

御前の横に並んで立ってみる。木々と色とりどりの花に囲まれた、人里離れた山奥

誰にも今まで見つけ出せなかった、御前の終の棲家は

驚くほどに居心地の良い空間だった。

・

・

美陽「千里先の音まで拾う耳をもつ鬼の名を、“順風耳”。

おめえさんは、あたしを蹴落として隊長になった。だから、その称号はおめえさんのものになったのさ」

雅紀「蹴落として、か……よく言いますよ。自分からヘリに立ったくせに」

美陽「そんなおめえさんが、なぜここに来た？」

雅紀「何も存じ上げないのですか？貴方ともあろうお方が」

美陽「やめとくれ、とっくに情報屋稼業は引退したんだ」

・

・

御前は屈み込むと、足元に咲いていた花を一輪、摘み取った。

・

・

雅紀「金龍が、亡くなったことは」

美陽「……初耳だねえ。まあ、おめえさんが現れたときからそんな気もしてたけど」

雅紀「………」

美陽「そう……あの人も、逝っちまったのかい」

・

・

摘んだ花をそっと口元に持っていき、キスをする。

静かに伏せられた睫毛が、僅かに震えるのが見えた。

その唇の中に、花が消えていくのを俺は止めることができなかった。

・

・

雅紀「龍村組の新組長には、和也が就任しました。

俺は………組を、抜けたんです」

美陽「不器用な子だね、雅紀。相変わらず」

・

・

立ち上がった御前の目には、涙はどこにも見つけられなかった。

「一つ、条件がある」。御前は微笑んだ。

・

・

・