［黄］汝、隣人を鏖殺せしか ページ41
間違えた。
偶にぴくぴくと夏場のアスファルトの鉄板にひっくり返っている蝉のように痙攣する隣人からは、粘度の低い柘榴色の水飴が流れ出ている。自身の両手に視線を落とすと、同じく隣人の水飴で彩られた料理用の出刃包丁がしっかりと握られていた。刺したのだ、隣人を、これで。私を襲ってきたコイツは絶対に人狼だと思った、襲われたから自衛した。しかし、この隣人は。
「どうして、人狼じゃないの…？」
出刃包丁が手から滑り落ち、足すれすれに床へ刺さった。死後硬直に勤しんでいる隣人を観察するが、人狼の特徴である狼の耳や尻尾は存在しない。つまり、私はただの村人を殺してしまったのだ。自己防衛とはいえ、襲われて錯乱状態であったから何度も何度も隣人の腹部を刺した。喰われるのが怖かったから、口に出刃包丁を押し込んだ。切り裂かれるのが怖かったから、指を全て切り離した。もう二度と人を襲おうだなんて考えないように、頭部と胴体をサヨナラさせた。
「A…？何が、あったんや」
私が動けずにいると、辺りの見回りに行っていたシャオちゃんが帰ってきた。彼は返り血の花が咲いた私を躊躇無く包み込むように抱き締め、頭を優しく撫でてくれた。温かくて、とても安心できる。この場に及んでも淡い恋心が顔を覗かせた。
「シャオちゃんあのね、私、この人におそわれて、それで」
「何も言わんでええよ、全部分かっとるからな。Aは全然悪くない、仕方なかったんやで。コイツが悪いんや、な？よぉ頑張ったなぁ、生きとってくれてありがとう。俺が許したる、やから」
「俺のことも許してくれる？」と言いながらシャオちゃんは私から離れ、床に転がっているシャベルを指差した。シャオちゃんが護身用に持っていったそれは、空気に触れて赤黒くなり固まった水飴で覆われ、所々変形しており原型を留めていなかった。
「あんな、俺、Aが大好きやから、Aが死ぬのは絶対に嫌なんや。でもこの村には人狼がおる、やけど人狼が誰か分からん。やったら、俺ら以外全員殺せばええやんか！って」
ふあふあの陽だまり様な笑顔で言い放ったシャオちゃんの頬にも、返り血の花が咲いていた。シャオちゃんがスコップを手に取ると、ぼたりと肉片が床に落ちる。「Aも俺のこと好きやろ？」と顔を覗き込まれ、体が無意識に首を縦に振った。
「恋も地獄も落ちるもんやろ？これからもずっと一緒やで、A」
［青］よまわりさん。(リメイク)→←［茶］判決、無罪 ※カニバ注意報
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ゆずは - コメント失礼します。ヤンデレにはまった時期があり実は少しずつ、小説を見させていただきました。返信、遅くなってしまいましたが、Twitterの方でも頑張ってください。これからも、応援させてもらいます。 (2022年3月14日 19時) (
レス) @page42 id: 083d316892 (このIDを非表示/違反報告)
ミア - 今までひっそりと応援させていただきました。ありがとうございました。貴女のこれからに溢れんばかりの幸があらんことを。 (2022年3月13日 1時) (レス) id: 022985fa21 (このIDを非表示/違反報告)
誠(プロフ) - レス機能が休暇中なのでお一人お一人にお礼を申し上げることは出来かねますが、いつも暖かなコメントをありがとうございます。私は幸せ者です、この棺の箱庭の蓋は閉じてしまいますが、ひっそりと文字書きは続けていきますので、よろしければこれからもお付き合い下さい (2022年3月12日 4時) (レス) id: 1fa7f4b5d2 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - お疲れ様に御座います。貴殿に幸あらんことを。徒然たる貴殿が真に誠に美しい。 (2022年3月12日 1時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
塩酸(プロフ) - この界隈の小説の作者様の中で1番大好きです。普段から素敵な作品をありがとうございます。 (2022年3月1日 21時) (レス) id: 5d3824b2a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：誠
| 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2021年9月4日 23時
