［茶］narcotic summer ページ24
#洋画「ミッドサマー」パロ
夕日色の赤髪を、淡い桃色の花で飾った女性と談笑する彼氏を遠巻きに眺める。細やかな刺繍が施された白い民族衣装に、マリーゴールドで染められた華やかなエプロンを纏った彼女は、御伽噺から飛び出してきたような儚さと可憐さを併せ持っていた。元々冷め切っていた関係、悔いなどある筈がないと自分に言い聞かせてみるが、一度熱くなった目頭は中々冷めてくれそうにない。
彼の友人から、折角の夏期休暇だから故郷であるスイスの小さな村へ来て欲しいと誘われ、流されるまま乗ったのが間違いであった。こんな酷い光景を見せつけられるくらいなら、いっそ夏の蒸し暑い部屋で孤独死した方が遥かにマシだったと思えるくらいには後悔している。彼氏とお揃いで買ったシャツの袖で雑に目元を拭っていると、肩に誰かの手が乗せられた。
「Aさん、ご気分が優れないのですか？何かあれば遠慮なく言って下さいね」
私の肩に乗った手は村長のエーミールさんのものだったらしい。真珠色の瞳に純白の衣装とは、宛ら妖精みたいだ、なんて薄っぺらい感想を抱く。大丈夫です、と再び彼氏の方に視線をやると、運悪くお熱の彼女と口付けを交わしている最中だった。
エーミールさんは二人を視界に捉えると、目を細め気の毒そうに私の肩を抱いた。本当はまだ彼のことを好きだったのに、やっと実った恋だったのに。涙が溢れて仕方がない。
「あれはAさんの…なんてみっともない。お可哀想に、彼らにはそれ相応の罰が下るでしょう。こんなことを言うのは酷ですが、忘れてしまいなさい。ええ、そうするのが一番ですから」
膝を折り屈んだ彼と視線が交わると、不思議な事にスッとその言葉が頭に入ってきた。まるで深層心理を日向に引っ張り出されたように、私が初めからその言葉を望んでいたように。ぴたりと涙の雨がやんで日が差し込んでくる。
「エーミール、さん。ありがとうございます…」
「いいのですよ、私が好きでやっている事ですので。そうだ、Aさんさえよければこの後の祝祭の儀式に参加してみませんか？きっと気も晴れます。私達はAさんなら大歓迎ですよ！そうと決まればまずは服を着替えましょう。髪も結って…貴方に似合う花も探して来ますね。まずは私の家へ」
返事をする前に顔を綻ばせた彼に手を引かれ、そのまま走り出す。失恋したばかりなのに、彼のことが好きなのに、胸の深部がぽかぽかと陽だまりに照らされ温かくなった。
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ゆずは - コメント失礼します。ヤンデレにはまった時期があり実は少しずつ、小説を見させていただきました。返信、遅くなってしまいましたが、Twitterの方でも頑張ってください。これからも、応援させてもらいます。 (2022年3月14日 19時) (
レス) @page42 id: 083d316892 (このIDを非表示/違反報告)
ミア - 今までひっそりと応援させていただきました。ありがとうございました。貴女のこれからに溢れんばかりの幸があらんことを。 (2022年3月13日 1時) (レス) id: 022985fa21 (このIDを非表示/違反報告)
誠(プロフ) - レス機能が休暇中なのでお一人お一人にお礼を申し上げることは出来かねますが、いつも暖かなコメントをありがとうございます。私は幸せ者です、この棺の箱庭の蓋は閉じてしまいますが、ひっそりと文字書きは続けていきますので、よろしければこれからもお付き合い下さい (2022年3月12日 4時) (レス) id: 1fa7f4b5d2 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - お疲れ様に御座います。貴殿に幸あらんことを。徒然たる貴殿が真に誠に美しい。 (2022年3月12日 1時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
塩酸(プロフ) - この界隈の小説の作者様の中で1番大好きです。普段から素敵な作品をありがとうございます。 (2022年3月1日 21時) (レス) id: 5d3824b2a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：誠
| 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2021年9月4日 23時
