［2021肝試し組］命尽きる迄、二月の駅に惑わされる ページ12
蓮見が、失踪した。
事件は一週間前の深夜、幼馴染の蓮見から唐突に届いたメッセージから始まった。『きさらぎ駅』という聞き慣れない駅で降りてしまい帰り方が分からない、電車が来ないから助けて欲しい、と。メッセージを受信した時刻は深夜零時三十分、こんな時間に冗談は勘弁しろと送りそうになったが、蓮見から次々と届く駅の様子や周囲の状況、そして無人駅の写真があまりにも生々しく、只事では無いと思い彼女に電話を掛けた。
ワンコールで繋がったが、携帯越しに聞こえた蓮見の声は普段と打って変わり、弱々しく、酷く何かに怯えている様子だった。『きさらぎ駅』をネットで検索しても有益な情報は得る事が出来ずとにかく彼女を励ましていたが、蓮見の「もう帰れないかも、今までありがとう。絶対探しに来ないでね」という半ば諦めた声が聞こえたかと思ったら、無機質な電子音が流れた。そう、電話が切られたのである。
「蓮見…今迎えに行くから、一緒に帰ろうね」
あの日の夜の事を思い出しながら、ガタガタと古びた電車に揺られスマホを握りしめる。親も学校も警察も、何故か早々と捜査を打ち切ってしまった。何故だと抗議しても誰にも聞き入れて貰えず、その上級友の中には蓮見の事を忘れてしまっている人さえ居る。何かが可笑しい、蓮見の身に人智を超越した危険が降り注いでいる、この二つの事実は私を行動させるのに十分な理由となった。
蓮見が利用した時刻と同じ電車に乗り、暫く不快な揺れに耐えていると、周りの人々が皆眠っている事に気が付いた…いいや、寝てるんじゃない。
草臥れた灰色のスーツのサラリーマン、夜の街で遊んだ帰りらしき派手な女性、英単語帳を床に投げ捨てて背凭れに体を預けている高校生、全員の顔が石灰の白粉を塗りたくったように真っ白で、目と口がある筈の部位には、墨汁をぼたぼたと垂らした様な黒い穴がぽっかりと空いている。空洞から涙を流している様に見えたが、溢れているのは大量の蛆虫だった。
「かわいそう、あの子、かわいそう」
「待ってる、あの人達が、貴方を待ってる」
此方へ這いずってくる蛆虫を踏み潰す毎に、脳を直接撫で回され得る様な痛みが走り、低い声が聞こえた。ガンガンと鳴り響く重低音により頭が可笑しくなってしまいそうで、トンネルを抜け止まった電車から一目散に脱出する。冷や汗でぐっしょりと濡れた前髪を払うと、蛾が集っている発車標が目についた。
其処には、案の定『きさらぎ駅』の文字が光っていた。
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ゆずは - コメント失礼します。ヤンデレにはまった時期があり実は少しずつ、小説を見させていただきました。返信、遅くなってしまいましたが、Twitterの方でも頑張ってください。これからも、応援させてもらいます。 (2022年3月14日 19時) (
レス) @page42 id: 083d316892 (このIDを非表示/違反報告)
ミア - 今までひっそりと応援させていただきました。ありがとうございました。貴女のこれからに溢れんばかりの幸があらんことを。 (2022年3月13日 1時) (レス) id: 022985fa21 (このIDを非表示/違反報告)
誠(プロフ) - レス機能が休暇中なのでお一人お一人にお礼を申し上げることは出来かねますが、いつも暖かなコメントをありがとうございます。私は幸せ者です、この棺の箱庭の蓋は閉じてしまいますが、ひっそりと文字書きは続けていきますので、よろしければこれからもお付き合い下さい (2022年3月12日 4時) (レス) id: 1fa7f4b5d2 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - お疲れ様に御座います。貴殿に幸あらんことを。徒然たる貴殿が真に誠に美しい。 (2022年3月12日 1時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
塩酸(プロフ) - この界隈の小説の作者様の中で1番大好きです。普段から素敵な作品をありがとうございます。 (2022年3月1日 21時) (レス) id: 5d3824b2a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：誠
| 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2021年9月4日 23時
