［橙］彗星の揺り籠と魔法使い ページ12
「お兄ちゃんは魔法使いなの？」
少女は自身の目の前に立つ青年へと問い掛ける。厚い瓶底眼鏡で隠された橙色の瞳から感情を読む事は出来ないが、青年は何処か嬉々としていた。あくまで少女がそう感じただけであって、真実は定かでは無いが。彼はテディベアを抱き締める少女からそっと其れを取り上げ、彼女を抱き上げた。
「ん〜まぁそんなもんやね。俺は彗星の魔法使いのチーノや！俺は魔法使いやから何でも知っとるよ。Aちゃんの好きなもんとか、して欲しい事とか将来の夢とか。ほら、はじめましてやけど君の名前呼べたやろ？」
少女は大きな瞳をくりくりさせて驚いた。もし少女が大人の女性だったならば、青年を気持ち悪いと罵倒するか今直ぐに彼の腕の中から逃げ出そうとするだろう。しかし、純粋無垢な少女は『魔法使い』の存在を疑う筈もなく、凄い、カッコいいと青年を讃える。
「いや〜そんなに褒められたら照れてまうなぁ！俺はAちゃんを助けに来たええ魔法使いなんやで。Aちゃんのお願いは全部叶えたりますからね。此処なら走っても怒る人は居らんし、苦いお薬も飲まんくてええ、辛い点滴も痛い手術も何にも無いんよ」
青年は不安そうな少女の背中を摩り、夜泣きする赤子をあやすように揺らし始めた。温かな人肌と程良い揺れは彼女の眠気を誘い、少女の内側に引き篭もり眠る睡魔を呼び覚まそうとする。程なくして少女が昏睡の底へ突き落とされると、青年は彼女を起こさぬよう声を押し殺して笑った。
彼が謎の言語を発すると、先程までの雲の上に広がる天国の様な、御伽噺の中から引き摺り出してきた様な幻想的な部屋は一気に血に濡れた。地獄と揶揄出来るその部屋を少女が見たならば、泣き喚き両親に助けを求めるに違いない。天井へ映し出されていた天の川は赤く染まり、彗星が横切ったかの様に裂けた場所から生臭い液体が二人へと降り掛かる。
彗星とは、綺麗な見た目とは裏腹に古代より災害や不運の象徴とされてきた。また疫病を招くとも言われ、彗星と共に出現した疫病により数多くの人が命を落としている。彼が仲間から『彗星』と呼ばれ始めた理由はその水色の髪色からか、それとも。
(先生、##病室Aちゃんのバイタル下がってます！)
「んはは、かわええ。現実のAちゃんは死んでまうけど、Aちゃんはずっと此処で俺と生き続けるんよ。一目惚れってあるもんやなぁ」
彗星に攫われた少女の行方は未だ知れず。
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みかん - すみません、grちゃんのハニーで吹きました。あとsyoちゃんがゲスい。だがそこがいい。最高の作品をありがとうございます！。 (2021年6月16日 14時) (
レス) id: ea5b4fe666 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - 天才すぎる…ゾッとするような恐怖と目が離せない様な吸い込まれるような美しさ、天才としか言いようがないです！！ヤンデレも宇宙と似てますしね…。抜け出せないところとか(目逸らし)誠様の文ほんとに好きです。また覗きに来ます。 (2021年4月10日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
誠(プロフ) - 天の河さん» 誠です！あもasと言ったらこれかなぁと思い書いてみました。超新星爆発は最後まで悩みに悩んだので、そう言って頂けて嬉しいです。お目通しありがとうございました (2021年4月2日 1時) (レス) id: b57bb5d927 (このIDを非表示/違反報告)
誠(プロフ) - 銀さん» お目通しありがとうございました。銀さんはいつも読んでコメントを下さるのでとっても嬉しいです…grの瞳を珍しく青に設定してみました。隠れた純情を察知して頂けて涙が止まらない… (2021年4月2日 1時) (レス) id: b57bb5d927 (このIDを非表示/違反報告)
天の河 - 誠さんや…！あもasパロ誰かがやると思っていました。黄緑色、私もとても好きです。教会で王子様が助けに来るとか定番で、更にヤンデレなので大満足です。とても読んでいて楽しかったです！ (2021年4月1日 22時) (レス) id: cb69af0fdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：誠
| 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2021年4月1日 8時
